【川崎】“苦労人”舞行龍が語った古巣愛と移籍の理由、そして初戴冠へのカギとは?

2017年02月20日 竹中玲央奈

川崎に持たれている時が自分たちのチャンスだと思っていた。

今季新加入の舞行龍が古巣への想いとタイトルへの熱い思いを語った。写真:徳原隆元

「ボールを持って攻めている時が、チームにとって一番危ない」
 逆説的だが的を射ているこの発言の主は、今季新潟より川崎に完全移籍で加入した舞行龍ジェームズである。
 
 成立学園を卒業後に新潟へ加入し、2年目のシーズンから4年半に渡り地域リーグやJFLでの武者修行を経験。その後戻ってきた新潟でレギュラーを掴んだが、「自分の中でもっと上を目指して、タイトルを取りたい」という強い思いから移籍を決断した。
 
 入団後間もなくチームが属するJ1より2つも3つも下のカテゴリーへレンタルに出されて複数年プレーすれば、所属元に戻ることなくそのまま完全移籍をするような"片道切符"となるケースは多い。そんななか、下部リーグでの経験を経てJ1に戻り、定位置を確保した彼の経歴は多くの選手に希望を持たせてくれるものでもある。そして、安易に見切ることなく育て続けた新潟の姿勢も賞賛されるべきだ。ただ、だからこそ舞行龍は「今までの成長を見守ってくれたチームなのですごく悩んだし、離れるのは辛かった」と言う。
 
 愛するチームを離れてやってきた新天地にかける決意は相当強いが、その中で舞行龍自身はチームの課題である守備の部分で貢献したいと強く語る。
 
 新潟時代に川崎に抱いていた印象については「ボールを持たれたらなかなか取れない」と、技巧派揃いのこのチームを賞賛していた。ただ、敵からすれば"川崎に持たれている"時は簡単にはボールを取れずにストレスが生まれる一方で、「自分たちにとって点を取るチャンスでもある」のだと言う。
 
「中盤とのスペースが空きすぎることでフロンターレはけっこうやられている。攻撃をしている時のリスクマネジメントを自分はうまくやっていきたい」
 
 自身の見解とそれに対してどうアプローチをしていきたいかをこう口にしたが、確かに川崎は攻撃時に全体の重心がかなり前掛かりになることが多く、敵陣でボールを奪われたところを起点に浅いディフェンスラインの裏を突かれ失点を喫するというパターンは多い。また、一人ひとりの寄せの甘さにも言及。「絶対に身体を張る」と自らが先頭に立ち、守備時のボールへの執着心を体現するつもりでもいる。
 
 2回のキャンプを終えて試合もいくつかこなしたなか、課題については「まだ完成するまで時間がかかる」と言いつつも、無失点で乗り切った試合もあった。徐々に手応えは感じているようだ。守備陣の中でもコミュニケーションを絶えず取っているようで、「やられないようにしっかりと意図を伝えてくれるし、合わせやすい。段々とコンビは良くなってきています」と谷口は言う。
 
「1-0の局面は、無失点で抑えて勝ち切ることも非常に大事だと思うし、すべて良い試合ができるわけではないと思うので。悪い時に守備が相手の攻撃を耐えられる存在になっていきたい」
 
 優勝争いをした昨年はチョン・ソンリョンやエドゥアルドらが守備陣に、これまでにはなかった耐久力をもたらした。今季、新たに加わった守備の要となり得る背番号29は、川崎のディフェンスにさらなる粘り強さを植え付け、悲願の初戴冠に導けるだろうか。
 
取材・文:竹中玲央奈(フリーライター)
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