「雪中サッカー」の真実。旭川実業高校の独自指導、志の高い“北海道スタイル”とは?

2017年02月17日 龍フェルケル

車で走っても走っても真っ白な雪道が続く。

旭川実業では11月から4月までのほぼ半年間、雪との共存を余儀なくされる。写真:龍フェルケル

 昨年、イギリスのサッカープロジェクトに招待されて、自国のサッカーを撮る機会を頂いた。厳密に言えばドイツ人の僕が、日本のサッカーを撮ることになったのだ。
 
 そこで、前々から興味があった"日本の部活"に焦点を当てる決心をした。とはいえ、ただの部活を撮るのは面白くない。『キャプテン翼』世代の僕は子供の頃、雪国での過酷な条件にも負けない松山光くんに惹かれていた。だから、ジャーナリストの安藤隆人氏にお願いして、雪国の高校を紹介してもらった。
 
 やはり日本で積雪が多いのは北海道。松山くんの故郷は富良野だが、今回の行き先は違う。ちなみに、後で聞いた話では、松山くんの銅像は富良野FCには立っていないとのこと。
 
 聞いたことはあるが一体どこにあるか分からない、旭川実業高校が取材を許可してくれた。空港に降り立つと、旭川実業の石山コーチがお出迎えしてくれた。
 
 気温はマイナス6度。ヨーロッパの中でも寒さが厳しいほうのベルリンに住む僕でも、かなり堪える。「寒いですね」と言うと、「今日は暖かいですよ」と返された。実際、数日後にはマイナス6度を暖かく感じることになる。
 
 空港から旭川実業までの道のりは文字通りの白銀世界。車で走っても走っても真っ白な雪道が続く。
 
 丘の上にある学校に着くと、富居徹雄監督が待っていた。45歳、体育教員。25年前にサッカー部を任された時の部員数はわずか8人。数合わせが大変だったという。現在は72名の選手が在籍し、全国高校サッカー選手権にも5度の出場を果たすほどの強豪校に育て上げた。
 
 真っ白なグラウンドは、雪の壁に囲まれている。毎週、ブルドーザーが雪を集め、固め、わずか半面のピッチを作る。11月から4月までのほぼ半年間は、雪との共存を余儀なくされるという。富居監督はこう語る。
 
「雪中サッカーとは、悪く言えば場所がないから。環境的に、場所がないから仕方なくやっていること。よく言えば足腰を鍛えるトレーニングになる」

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