【広島|新体制】10番背負う新ブラジル人MFはウェズレイの太鼓判。外さない補強とプレー強度の向上で王座奪還へ

2017年01月15日 中野和也

現実のパフォーマンスを見たうえでの分析が補強の成功確率を向上させている。

 広島の補強はこのところ、大きな「外し」がない。たとえば柏好文や佐々木翔、そしてピーター・ウタカ。彼らに共通して言えるのは、広島と対戦した時に強烈な印象を残している、ということだ。ビデオでも数字でもなく、実際に目の前で対峙した選手のパフォーマンスを見て、獲得候補へとリストアップする。広島の戦術に対しての理解度や相性などを、現実のプレーから探っていくわけだ。
 
「稲垣祥についても同様ですね。我々との対戦で、運動量と切り替えの速さでかなり苦しめられた」と足立修強化部長は言う。さらに工藤壮人についても、対広島戦での高いパフォーマンスを目の当たりにしたことで「絶対に欲しい人材」と確信。2015年オフから数えて3度、彼に移籍を申し入れた。それでも広島入りを断るつもりだった工藤に対し、「広島から日本代表に復帰してほしい」と熱く語りかけた。「これ以上はないほど、広島から自分を必要としてくれているという想いを感じました」(工藤)。その熱意の源は、現実のパフォーマンスを見た上でのプロフェッショナルな分析。それが、補強の成功確率を向上させている。
 
 その「分析」という意味でいえば、補強の意図も的確だ。たとえば増田卓也が長崎に期限付き移籍、さらに佐藤寿人が名古屋に完全移籍、P・ウタカとの交渉も難しい局面に入ったことによってGKとFWの獲得は急務となった。だが「広島サッカー」の特長を考えた時、GKに求める能力は他のチームとは違ってくる。
 
 その点、6年前に在籍した中林であれば理解度に問題はないし、さらに「J2最高のGK」と足立部長が絶賛する彼のパフォーマンスであれば、昨年までは「鉄板」だった林卓人とのポジションは激化することは間違いない。FWにしても広島の戦術に合致するには、周囲との連動性を生かしたプレースタイルが必須なわけで、そこも工藤に対する高評価の理由だろう。
 
 さらに「相手が自陣で深く守ってきた時に苦戦を強いられた」(足立部長)という現実を打破するために、ドリブルで打開できる力を持つフェリペ・シウバを採用。彼についても、村山哲也スカウトをブラジルに派遣し、現地でプレーを何度も確認。かつて広島でプレーしたウェズレイの太鼓判を得ることで獲得に踏み切った。
 
「典型的な10番ではあるが、ハードワーカーでもある」
 フェリペ・シウバを知る人はそう口を揃えるが、それこそが広島が求めている人材だ。今季の広島は、森保一監督が「プレー強度をより高めたい」と方向性を打ち出し、特に運動量の増強について改善に乗り出す意向を示している。
 

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