[選手権決勝]青森山田５－０前橋育英／１月９日／埼玉
 
　まさに電光石火の２得点だった。

第９５回高校サッカー選手権・決勝 青森山田５－０前橋育英
 
　青森山田が２点リードして迎えた後半12分、嵯峨理久（３年）の右クロスをエリア内で受けた鳴海彰人（３年）が、胸トラップから右足でシュートを決める。
 
「もう定番になっているので、絶対やるって決めてました」（鳴海）というクリスティアーノ・ロナウドのゴールパフォーマンスを披露した鳴海はさらにその２分後、郷家友太（２年）が空中戦で競り勝ったボールにいち早く反応。１点目と同じようにゴール右からシュートを流し込こみ一気に４点差へ広げた。
 
「ハーフタイムに監督から『次はお前が決めろ』と言われて、絶対決めると思いながら後半は入りました」と語った鳴海には、どうしてもゴールが必要だった。今大会での得点王を目指すなか、前半23分の先制点は鳴海と同じく得点ランクトップ（４得点）の高橋壱晟（３年）の左足からもたらされたからだ。
 
「大会になると（得点数で）壱晟と競ること多い」（鳴海）という高橋は、鳴海にとって良きライバル。互いに切磋琢磨しながら成長を遂げ、今大会でも２回戦から準々決勝までともにゴールを決め続けてきた。そんななかで迎えた決勝前日には、「壱晟とは試合前に『同率得点王になろう』と誓っていた」こともあり、このまま終わるわけにはいかなかった。
 
　ひとつ前の準決勝（対東海大仰星）では高橋が１得点したのに対し、鳴海は無得点。そしてこの日の決勝では前半まで鳴海にゴールはなかった。焦燥感が漂いかけるなかでの高橋の先制点はいわば、突如ブレーキがかかりかけた鳴海の得点感覚に、再びエンジンを回させるきっかけを与えたとも言えるだろう。
 
　決勝での２ゴールで「同率得点王」どころか、得点ランク単独トップに躍り出た鳴海は、夏のインターハイに続く得点王を獲得。夏冬の２冠達成に「めっちゃ嬉しい」と満面の笑みを浮かべた点取り屋は、高橋との良い競争を築きながら栄誉を手にした。
 
 
取材・文：橋本 啓（サッカーダイジェスト編集部）

【PHOTOギャラリー】大会優秀選手｜MF・FW編

【PHOTOギャラリー】大会優秀選手｜GK・DF編