【選手権舞台裏】柴崎岳ら輩出した青森山田。雪との“共生”で辿り着いた「限界を設けない」という境地

2017年01月10日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

雪かきもトレーニングのひとつ。練習は切り替えの早さが印象的だった。

就任22年目にして選手権制覇を成し遂げた黒田監督が、選手たちから胴上げをされる。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)部)

[全国高校サッカー選手権大会・決勝]
青森山田 5-0 前橋育英
2016年1月9日/埼玉スタジアム

 青森山田のGK廣末陸はFC東京U-15(ジュニアユース)からU-18(ユース)に昇格できず、気持ちを切り替え「憧れていた高校選手権で優勝して、プロになる」という目標を打ち立てたと言う。そして青森山田に練習参加し、「真っ先に『ここでやりたい』と思えたんです。寮生活をして、サッカーにとことん打ち込みたいとも考えていました」と、進学先を決めた。
 
 しかし、入学前に青森に渡り、絶句した。一面、銀世界。練習開始だと言われても、雪ですべてが覆われていて、どこになにがあるのか、そこがグラウンドであるのかさえ分からない。こうした日は、体育館で練習をするのだろうと思った。すると上級生が雪のグラウンドに現われ、ランニングを開始する。廣末もそれに続いた。
 
「それは驚きましたよ。最初は、え、どこで練習するんだろう? と思いましたから。そしたら、雪の上で走り出しましたから」
 
 雪かきも立派なトレーニングの一環だと知る。そこで食いしばり掘り起こした先には、人工芝のグラウンドが"待っている"のだ。いかに効率よく雪を取り除くのかは、常に選手たちのテーマでもある。
 
 筆者も椎名伸志(現・富山)がキャプテンを務め、柴崎岳(現・鹿島)が1年生だった時、青森山田高の現地取材をさせてもらったことがある。時期はちょうど初雪が降った直後だった。その時1日中練習を追わせてもらい、印象に残ったのが、練習の切り替えの早さと段取りの良さだ。
 
 日照時間は短く、急激に気温も下がることから、グラウンドを使える時間は限られている。その想いを共有しているからこそ、チーム誰もがボールを扱える有難みと楽しさを堪能しているようだった。練習を"やらされている"感じがしなかった。言葉でいうのは簡単だが、まさに日々の一瞬を大切にしている様子が伝わってきた。

「雪のうえでのゲームで負けたら、新雪の雪かきが罰ゲームで待っている。だから選手たちも必死なんですよ(笑)」
 
 全国高校選手権の優勝が決まったあとに黒田剛監督はそう語っていた。

【PHOTOギャラリー】大会優秀選手|MF・FW編
 

次ページFC東京入りするGK廣末は言った。「もがき続け、限界を設けず自分を追い込んできた」。

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