【選手権】終了間際に被弾…駒澤大高を襲った「勝てるだろうという驕り」

2017年01月05日 森田将義

後悔ばかりが募る結果で終わったが…。

駒澤大高は後半40+2分に決勝点を奪われ、ベスト8で大会を後にした。写真:徳原隆元

[選手権準々決勝]佐野日大 2-1 駒澤大高/2017年1月5日/フクアリ
 
「これだけ選手が揃うのは滅多にない」
 
 大野祥司監督が口にするように今季の駒澤大高は、本気で日本一を狙った勝負の年。指揮官は「もっと上に行かなきゃダメだった。選手の能力があるのに、ここで終わらせてしまった。あっという間に負けてしまったように思う。選手はよくやってくれたけど、充実感はない」と、ベスト8まで進んだ喜びよりも、悔しさのほうが強いと語った。
 
 持ち味を発揮しれなかった試合内容も悔しさを募らせる要因だろう。2日前の3回戦では山梨学院大に4-0で大勝。大野監督が試合前、選手に「大勝した後は難しいぞ」と伝えていた通り、立ち上がりは佐野日大の手堅い守りに苦しんだ。
 
 サイドをドリブルで仕掛けてからのクロス、相手DFを引き出すためのミドルシュートなど打てる限りの策は講じたが、「何をやってもダメだった。惜しいで終わって、すべて相手の策にハマってしまった」(大野監督)。反対に佐野日大のロングボールに慌ててしまい、前半8分にはFW長崎達也にクロスバー直撃弾を受けるなど守備が落ち着かず。大野監督は「どこかに勝てるだろうという驕りがあったと思う。そこが敗因」と分析する。
 
 苦しみながらも後半22分に途中出場のFW米田泰盛がゴールを奪ったが、直後の26分に同点弾を献上。平均身長が5センチ以上も下回る佐野日大の選手が、「勝ちたい気持ち」(海老沼秀樹監督)を全面に押し出し、競り合いで上回ったのに対し、「守りの最後は気持ちの部分。最後は根性が足りなかった」(佐藤瑶大)と守備で根負けする場面も見られた。
 
 指揮官も残り時間わずかとなってからは、PK戦を想定した。「PKは自分たちで順番を考えさせようと思っていた。彼らの判断で負けたら仕方がないかという意図があったけど、私がPKを考えたのがダメだった。雰囲気が選手に伝わり、PKになる前に負けてしまったのかな」と悔やんだように、PK戦突入間近の後半40+2分に、ミスを機に決勝点を奪われたのは痛恨だった。
 
 昨年も東福岡に0-1で敗れ、ベスト8で敗退。遡れば、3回戦で山梨学院に敗れた6年前の89回大会も今回と同じフクアリで涙を飲んでいる。この日の試合前には、大野監督は「ここで勝たないと新しい歴史を作れない」と選手にハッパをかけたが、思い通りの結果は残せず。佐藤は「タイトルは獲れなかったので、あまり良い1年間とは言えなかったし、最後の選手権では昨年の壁を越えることができなかったことが悔しい」と唇を噛んだ。
 
 後悔ばかりが募る結果で終わったが、選手たちの人生はここで終わりではない。大野監督は最後にこんな言葉を残している。「サッカーは人生と同じだと思う。良い時もあれば、悪い時もある。良い時こそ兜を締めないといけないし、悪い時は誰になんと言われようと信念を持ってやらないといけない。次の舞台でも色んな壁に当たると思うけど、今日の失敗を次の壁に当たった時のヒントにしてほしい」。誇りでもあり、悔しさでもある2年連続ベスト8という成績を背負い、駒澤大高の3年生は次なるステージに進む。
 
取材・文:森田将義(サッカーライター)
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