【選手権】流経大も「絶対に欲しい人材」。東邦のガーナ系大型DFは発展途上の晩成タイプ

2017年01月02日 川端暁彦

リーチの長さには指揮官も驚きを隠さない。

東邦のDFアピアタウィアは夏以降に台頭し、急成長を見せて定位置を掴んだ。その存在感の大きさにはトップクラスの大学勢も興味を示している。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

[選手権2回戦]東福岡 1-0 東邦/2017年1月2日/等々力
 
 80分間を通じて東邦の放ったシュートは、「0」。試合開始当初から東邦が一方的に殴られ続ける試合となっていたのは否めない。だが、スコアボードの数字は「0-0」から動くことなく、時を刻み続けた。
 
 その中心にいたのが主将の小出晴貴(3年)だったのは間違いない。チーム一番のガッツマンは新人戦の段階では応援のひとり、インターハイ予選からようやくレギュラーになり、この夏から正式にキャプテンとなったという下から積み上げてここまで来た努力家だ。この試合も身体を張ったプレーを継続し続けて、東福岡の攻勢をしばしば跳ね返してみせた。
 
 だが同時に、その隣でプレーするDF、アピアタウィア久(3年)の能力の高さも明らかだった。小出がガッツでカバーしている能力差を、アピアタウィアは自身のタレント性で補って、東福岡の攻撃に対抗する。横井由弦監督はガーナ人の父を持つアピアタウィアの特長を「まずリーチの長さ。こちらが届かないだろう、あるいはファウルになってしまうだろうと思うところでボールを取ってしまう」と形容する。身長190センチという単純な高さだけではない強みは、この試合でも健在だった。
 
 ただ、そんなアピアタウィア、実は夏までAチームの選手ですらなかった。この日センターバックでコンビを組んでいた小出とはBチームが出場している愛知県2部リーグで一緒にプレーしていた間柄。「われわれの目が節穴だったのかな」と横井監督は苦笑いで振り返るが、そんな環境でも腐ることのなかった「規格外の選手」(同監督)は、「たまたま出られた」(本人)というプリンスリーグ東海の試合で好プレーを見せ、小出に続く形でレギュラーポジションを掴み取った。
 
 アピアタウィアがポジションを奪った夏以降はプリンスリーグでの戦績も一気に上向いており、「試合をやるたびに自信が付いてきた」と自ら振り返ったように、プレーも着実に進歩。高校選手権愛知県予選でも印象的なプレーを見せて、流通経済大と阪南大という全国制覇経験を持つ東西の強豪大学からそれぞれオファーを受け、争奪戦となるまでになった。流経のスカウト担当者は「絶対に欲しい逸材」と断言しており、夏までレギュラーですらなかった選手に対して異例のラブコールを送っている。
 
「相手は優勝候補、こちらは挑戦者なので、泥臭く粘って勝ちたい。燃えますよ」と語っていた東福岡戦を終えたが、アピアタウィアのサッカー選手としての挑戦はここから本格的に始まっていく。横井監督は「まだ発展途上の選手。この先の舞台でもう一段階ステップアップしてくれれば」と、急成長を遂げた教え子の飛躍に期待を込めた。
 
 アピアタウィアの名前の「久(ひさし)」は祖父から受け継いだ名前だという。長く時を経るさまを示す一字は、明らかな晩成タイプである彼にふさわしいものだろう。大学サッカーという舞台で、この才能が本当の意味で花開く日を、楽しみに待ちたい。
 
取材・文:川端暁彦(フリーライター)

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