【選手権】青森山田の中心に君臨するハイスペックなボランチ・住永翔が示した存在感

2017年01月02日 安藤隆人

試合後、住永の声は相変わらず枯れていた。

的確なポジショニング、正確なパス、そして周りを動かすコーチング。住永は様々な能力を高い次元で備えている。写真:田中研治

[選手権2回戦]青森山田 5-0 鵬翔/2017年1月2日/NACK 

 見事な選手宣誓の後は、見事なプレーと素晴らしい声を披露した。
 
 青森山田のキャプテン・住永翔は、12月30日の開会式で、一度も言葉に詰まることなく、聞き取りやすいように間を置きながら、中身の濃い選手宣誓をした。この宣誓を聞いただけでも、彼が人間として大人で、名門の精神的支柱になりうる存在であることは十分に理解できただろう。
 
 その姿はピッチ上でも変わりはない。年が明けた1月2日、鵬翔との初戦を迎えた住永は、NACK5スタジアム大宮でそれを示してみせた。
 
 4−1−4−1のアンカーに入り、常に全体のポジショニングを見ながら、スペースを埋めたり、セカンドボールを拾って、鵬翔の攻撃を食い止める。そして安定したキープ力と高い展開力で攻撃の起点となり続けた。
 
 前半7分、中央でボールを受けた住永は、裏のスペースへ動き出したMF郷家友太を見逃さず、正確なフィードを送り込んだ。正確なロングパスを受けた郷家のシュートはGKに弾かれたが、こぼれをMF高橋壱晟が押し込んで、青森山田が先制した。
 
 2−0で迎えた前半31分には、鵬翔の2年生エースFW宇津元伸弥がボールを受け、カウンターに転じようとした瞬間、「相手の動きを読んで、間合いを詰めてからボールを奪い取ることは、ずっと意識していた」と、鋭い出足でボールを奪い取る。その直後、敵最終ラインの中央のスペースに抜け出そうとしていた郷家と目が合った。
 
「足下に前を向きやすいパスを意識した」と、絶妙なタイミングで正確なスルーパスを送った。住永から送られた糸を引くようなボールに、郷家はワンタッチで前を向いて、ツータッチ目でシュートを打てば良かった。ボールはゴールネットを揺らし、住永は相手の息の根を止める3点目をアシストした。
 
 このプレーで試合は完全に決した。以降も安定したプレーと、彼の代名詞と言える質の高いコーチング、味方を鼓舞する声で、チームのバランスを支え続けると、チームは5−0の大勝を飾った。
 
「勝てたことは良かったが、まだ立ち上がりに課題があった。もっとシビアに、相手に『これはいけるぞ』と思わせず、『もう何も出来ない』と思わせるほど、厳しく、集中をして全員で戦いたい」
 
 試合後、そう語る住永の声は相変わらず枯れていた。彼を取材すると、毎試合そうだ。それだけ彼は、最後の最後まで声を出し続けている。
 
 青森山田の中心に君臨するハイスペックなボランチ・住永翔の存在は、青森山田最大のストロングポイントになっている。優勝候補筆頭の初戦は、それを再確認する一戦であった。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)
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