【選手権】“ど真ん中”という信頼。佐野海舟は米子北のブスケッツへと成長できるのか

2017年01月02日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

「チームのためのハードワークを見てほしい」

陣取るのはチームのど真ん中。「パスやシュートだけでなく、チームのためのハードワークを見てほしい」と佐野は言う。写真:田中研二

 NACK5スタジアムで行なわれた選手権1回戦の旭川実 – 米子北。試合前に手にしたメンバー表に記された数字は3が31、2が8、1が1。両チーム合わせて40選手いるなかで、佐野海舟は唯一の1年生だった。

 結果的に見れば、2得点・1アシストで3-0の勝利に大貢献した伊藤龍生(3年)がフィーチャーされるべき試合だったろう。しかしスタメンとして80分間をピッチで過ごした佐野は、紙面上でそうだったように、ピッチ上のどのシーンでもすぐに発見できた。

 この試合後、中村真吾監督は言った。「試合開始当初から全員がよく走っていた。特に中盤の選手たちが様々な場面に顔を出してセカンドボールを拾ってくれたのが大きい」

 米子北が敷いた布陣は4-3-3。その中盤の「3」のなかでさらに真ん中、言葉のとおりチームの中心で攻守に存在感を出していたのが佐野。ただ、本人は初戦のプレーぶりに満足をしていない。
 
 ミックスゾーンでは試合中に見せる堂々としたプレーぶりとは少し違う、シャイと表現すればいいのか、それでもプレー同様に誠実な姿勢で言葉を紡いでくれた。
 
「緊張が強くて、前半は自分の思ったようなプレーをできなかった。それがとれたのは後半の途中から。そのなかでもサイドにつけるパスや競り合い、セカンドボール奪取はできていた。
 
 それでも、プレスバックが遅かったり、アプローチの連続性がなかったりして、課題がたくさん残った。監督やコーチが期待してくれているのは十分に理解しているし、ポジションはチームのど真ん中なので誰よりも動かなきゃいけない。
 
 誰よりも指示を出さなきゃいけないし、それに関して先輩たちは『遠慮せずにゲームではガンガン言ってこい』と自分が気を使わないように配慮してくれている。難しい部分もあるが、この大会でひと皮剥けられればと思う」
 
 受け答えで、なぜ彼が重要な位置を任されているのかという謎が氷解した。もちろんテクニック面やフィジカル面の充実もある。ただ、質問に対して戸惑うことなく、的確な返しを間髪入れずにする姿は明晰さを感じさせた。
 
 そんな佐野が目標としているのが、バルセロナで同じポジションをこなすセルヒオ・ブスケッツ。攻撃時の舵取りはもとより、「守備面のポジショニングやチームのために身体を張れるところをもっと見習いたい」とも言う。
 
 さらなる成長を貪欲に求めるが、そのためには試合経験が必須。試合経験を多く積むには、勝ち進まなければならない。2回戦の佐野日大戦では、どんなパフォーマンスを披露してくれるだろうか。
 
「緊張してしまった反省を生かして、試合開始から良いプレーができるように、これからの時間を過ごしていきたい。ミドルレンジのシュートや攻撃のスイッチとなるパス、チームのためのハードワークを見てほしい」
 
 大器の片鱗を感じさせる背番号16。彼の一挙手一投足に注目して、損はないはずだ。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)

第95回高校サッカー選手権 1回戦 旭川実 0-3 米子北
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事