【皇后杯】殊勲のPKストップで優勝に貢献。INACのGK武仲麗依が着けていたグローブの秘密

2016年12月27日 多田哲平(サッカーダイジェスト)

決勝の出番は急遽、回ってきた。

「PK戦は入って当たり前だと思っているので、緊張せずにやれた結果」と活躍の要因を語った。写真:田中研治

[皇后杯決勝]新潟L 0(4PK5)0 INAC/12月25日/フクアリ
 
 12月25日、フクダ電子アリーナで第38回皇后杯の決勝戦が行なわれ、INAC神戸レオネッサ(以下、INAC)がアルビレックス新潟レディース(以下、新潟L)を破り、優勝に輝いた。
 
 試合は延長戦を含めた120分でも決着がつかず、PK戦に突入。その熱戦で輝きを放ったのが、INACのGK・武仲麗依だった。
 
 先攻は新潟L。ひとり目のキッカー・中村楓のシュートを、武仲は倒れこみながら左手でセーブ。さらにその後も、武仲は相手のシュートに鋭い反応を見せる。
 
 そして、サドンデス方式で迎えた7人目。渡辺彩香のゴール右側を狙ったシュートを、武仲は横っ飛びで再びストップする。そして後攻のINACは、増矢理花がきっちりと決め、接戦を制し、連覇を決めた。
 
「今日はいけそうな気がしました。緊張というよりは楽しもうという気持ちが一番大きかったです」
 
 決勝戦のヒロインは飄々と試合を振り返ったが、実はその出番は急遽、回ってきたものだった。
 
 23日に行なわれたベガルタ仙台レディースとの準決勝では、武仲はベンチスタートだった。ゴールを守っていたのは、福元美穂。8月に加入後、正GKを務めてきたベテランだ。しかし、延長前半の途中に相手と接触した福元は、負傷交代を余儀なくされる。この時、代わってピッチに入ったのが、武仲だった。
 
 結局、福元の回復は間に合わず、決勝でも武仲が続けてゴールマウスを守ることになる。しかしこの日、武仲が着けていたのは、いつもの自分のグローブではなかった。
 
「『これ良ければ使って』と言われて、最初は「アップで使います」と言ったんですけど、やっぱりみんなの想いを背負ってやらないといけないなという責任を感じて、『やっぱり試合で使います』と言って、使わせてもらいました」
 
 決勝で武仲が着けていたのは、負傷した福元のグローブだった。そして、福元や出場できないメンバーの想いを胸に責任感を増したサブGKは、大一番で見事に仕事を果たしてみせたのだ。
 
 試合後のインタビューでは、「メンバーに入ってない選手のためにも頑張ろうと思いました」と真っ先に答えた姿が印象的だった。
 
 武仲にとって、福元のグローブは何よりの〝クリスマスプレゼント″となったかもしれない。
 
取材・文:多田哲平(サッカーダイジェストWEB編集部)
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