【インカレ】闘病中のOB、新潟・早川に「勇気をもらった」筑波大が怒涛のゴールラッシュで13年ぶりの優勝!

2016年12月18日 竹中玲央奈

日体大はエースの出場停止が響く。

早川のユニホームとともに試合前の集合写真に収まった筑波大イレブン。写真:竹中玲央奈(※写真は準決勝時)

 大学サッカーの頂点を決める全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)の決勝は、目を疑うような8-0というスコアで筑波大が13年ぶりの王座に輝いた。
 
「高野選手のゴールが入っていたら分からなかった」
 筑波大・小井土監督がこう振り返ったように、序盤は圧倒的に日体大のペースだった。小井土監督が言及するのは横浜F・マリノス内定の高野遼が12分に放ったバー直撃のミドルシュートのこと。サイドと中央を使って筑波大を自陣に押し込んだ日体大は、完全に試合の主導権を握りゲームを進めた。
 
 しかし、この日の勝敗を分けたのはゴール前の質の違いだった。押し込むもののゴールが遠い日体大を尻目に、筑波は訪れたチャンスをしっかりと沈める。
 
 28分、中央の崩しからこぼれたボールを拾った西澤健太がボックス外から左足を振り抜きネットを揺らすと、36分には右サイドを突破した会津雄生のクロスを西澤が頭で合わせて2点差に。余裕が生まれた筑波大は日体大の圧力を受けつつも、今大会わずか1失点の守備陣がゴールを割らせない。そして前半アディショナルタイムの45+1分にこの試合を決定づけるゴールが決まる。
 
 自陣から会津が前線へフィードを送ると、これに反応した中野誠也がワンタッチで相手をかわしてGKと1対1にもち込み、冷静にネットを揺らした。そして、その直後に前半終了の笛が鳴る。
 
 日体大にとってはまずは1点を返そうと前がかりになったところの裏を突かれた、最悪の失点だった。そして、日体大が負の連鎖に陥る一方で、筑波大の勢いがさらに増していく。53分に中野がこの日2点目を決めると、61分、70分、80分と今大会初先発のFW・北川柊斗が次々とネットを揺らしハットトリックを達成。そして締めくくりは89分。見事なグループの連係で中央を崩し、中野が左足でフィニッシュ。
 
 2トップが揃ってハットトリックを記録し、8得点の大勝で筑波が2003年以来の大学王者の座に輝いた。
 
 日体大としては準決勝で決勝点を決めたエース・髙井和馬を累積警告で欠いたことが非常に大きなダメージだった。
「自分が出ていれば……、とも思いました」。試合後、髙井は悔しそうにこう語った。
 
 しかし、彼が出ていたとしても、筑波大の勢いを止めることは難しかったかもしれない。
 
「24時間、早川さんは戦っている。僕らは1日のうちの90分を頑張れば良いと思っていて。彼から逆に勇気をもらいました」(中野)
 今年の6月に急性白血病が明らかになった、新潟所属の早川は筑波大のOBだ。日々、闘病生活を続けている先輩のその姿を見たことで、多くの選手が"自分たちも頑張らなければいけない"と強く奮い立たせられたという。
 
 この13年ぶりの優勝は、新潟の地で戦う早川の存在なしにはあり得なかった。
 
 現在、3年生が主体となっている筑波大は、来年も主力メンバーの大半が残る。「強い筑波」の新たなる時代が、幕を開けることになるだろう。
 
取材・文:竹中玲央奈(フリーライター)
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