【蹴球日本を考える】敵将も賞賛! 鹿島が見せた“日本らしさ”が明暗を分ける

2016年12月12日 熊崎敬

前半は一方的に攻め立てられた鹿島が後半立ち直り勝利を掴めたわけとは?

柴崎が敵陣をドリブルで持ち上がる。後半は何度も攻撃の起点となるパスを繰り出し続けた。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 まったく奇妙なゲームだった。
 前半はマメロディ・サンダウンズが一方的に鹿島を攻め立て、GK曽ケ端は右へ左へ忙しく跳び続ける羽目に。0-0で折り返したのが奇跡のような劣勢だった。
 
 ところが後半になると、流れがまったく変わる。
 前半、何もできなかった鹿島が中盤を制圧し、遠藤と金崎のゴールによってマメロディを押し切ってしまったのだ。
 
 この前半と後半の変化は、なぜ起きたのか。
 ひとつには、鹿島が落ち着きを取り戻したことがある。
 
 石井監督は次のように振り返る。
「前半が耐える場面が多かったのはアフリカ勢との対戦が初めてで、スピードや身体能力への対応に戸惑った部分があった。後半は自分たちで敵陣でボールを動かす形ができたし、守備でもパスの出どころをしっかりマークすることができた」
 
 だがもうひとつ、マメロディのペースダウンも見逃せない。
 このあたりについてモシマネ監督が試合後、豊かな表現力でゲームのことを語ってくれた。
 
「結果は残念だが、パフォーマンスには満足している」
 そう強調した指揮官は、次のように付け加えた。
「我々はクラブワールドカップ初出場、いわばルーキーだ。国際試合がどういうものか、ちゃんと理解してプレーしなければならない。だが例えばレフェリーが流す、見逃すといった傾向にアジャストできなかった。馬に乗っている時は、自分の手綱さばきで馬を走らせなければならないんだ」
 
 要するに、ゲームをコントロールする能力に欠けたということ。手綱を掴んでいたはずなのに、主導権を握っていた前半に決められず、気がつけば馬に翻弄される羽目になった。
 
 モシマネ監督は鹿島の印象についても、興味深いコメントをした。
「鹿島は時間が経つにつれてフィジカルも精神力も強くなる。最後の20分から30分の規律がとても良かった。反対に我々は前半に得点できなかったことで、修正が必要になった。でも、修正をすることによってリズムが遅くなることもある」
 
 これが勝敗を分けた、いちばんの要因かもしれない。
 前半は浮足立った鹿島だが、最後まで精神力や規律といった自分たちのいいところを出そうと努力した。反対にマメロディは、前半のチャンスを仕留めきれず、あっさりとリズムを崩した。
 
 精神力に規律。これはやはり、日本らしさの勝利といってもいいのではないか。アフリカ勢という未知との遭遇によって、改めて自分たちを知る。これもクラブワールドカップの面白さといえるかもしれない。

取材・文:熊崎 敬((スポーツライター)
 
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