【CS準決勝|ハイライト検証】CB昌子が“あっさりと”憲剛にかわされた59分の場面。組織で守るため「わざと大げさに滑った」

2016年11月24日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「はたから見たら、“うわ、かわされた!”となるかもしれないけど」

中村との駆け引きに勝った昌子。劣勢の時間帯が長く、「しんどかった」と振り返るも、身体を張って最後まで守り切った。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

[Jリーグチャンピオンシップ準決勝]川崎 0-1 鹿島/11月23日/等々力

 59分のワンシーンには、鹿島のディフェンスリーダー、昌子源の凄みが凝縮されていた。
 
 自陣エリア内のやや右側に、三好康児のパスに抜け出した中村憲剛が侵入してくる。これに素早く反応した昌子が、シュートブロックのため身体を投げ出してスライディングを試みる。
 
 中村はこれを予測していたかのように、左足でそのまま打たずに切り返し、右足に持ち直してシュート。ボールは枠を外したが、決定的な場面だった。
 
 懸命なディフェンスを見せた昌子が、中村にあっさりとかわされた――。そう捉えられても不思議ではない。ところが、昌子からしたら"してやったり"だった。
 
「絶対に切り返すと思っていた。分かっていたけど、そのままシュートを打たれたほうが危ないと思った。だから俺が自分でスライディングして、"切り替えさせたら"、多分、(ファン・)ソッコとかが間に合うんじゃないかと、わざと大げさにめっちゃ滑った。案の定、切り返してくれて、それでソッコか(山本)脩斗君が寄せて、コースがなくなった」
 
 まさに昌子の思惑通り。中村にそのままシュートを打たれても防げるようにスライディングをする。しかし、それはある意味、フェイクの動き、駆け引きでもあった。中村が左足から右足に持ち直すために要したほんの数秒が、ファン・ソッコに寄せる時間を与え、中村のシュート精度を狂わせた。
 
「自分の判断は間違っていなかったと思う。はたから見たら、"うわ、かわされた!"となるかもしれないけど。あれは、俺らディフェンス陣の"勝ち"やったかな、と。組織で守ることができた」
 
 こうしたスリリングな局面のせめぎ合いを一つひとつ、確実に制した鹿島が、リーグ屈指の攻撃力を誇る川崎を無失点に抑え、浦和が待つファイナルへと駒を進めた。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

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