【鹿島】CSの鍵を握る守備の要――"嫌われ者"になった昌子源がチームを勝たせる

2016年11月23日 サッカーダイジェスト編集部

遠慮があって言えなかったひと言、「やれよ」を今季は言い続けた。

昌子は「うちの1点と相手の1点は重みが違う」と気を引き締める。(C)SOCCER DIGEST

 さわやかな青空が広がった鹿島クラブハウスの練習場。チャンピオンシップ準決勝の川崎戦に向けて円陣が組まれ、強化責任者を務める鈴木満常務からチームに激励の言葉が向けられた。
 
 その後、セットプレーの練習を行ない、ミニゲームで約1時間30分の練習を締めた。セットプレー練習で緊張感、集中力を高く保ち、ミニゲームでリラックスする。一発勝負を前にしても、鹿島にはいつもの光景が広がっていた。
 
 この空気をピッチの中で吸った昌子源は「昨年のナビスコカップ前と似ていますね。変な緊張はなく、でも、どこかぴりぴりした感じがね」と言った。
 
 昨年のナビスコカップ決勝、G大阪を3―0で快勝した試合前日も同じ練習メニュー、同じ雰囲気だった。「その時と同じ展開にしたいですね」。そう笑いながら明かす姿には、今季積み重ねてきたディフェンスリーダーとしての自信と使命感が感じられた。
 
 昌子は変わった。年上の選手や外国人選手を問わず、守備のほころびをなくすために鬼になった。それを支えたのは「チームで一番戦う姿勢は見せられたと思う」という自信であり、「チームを引っ張っていかないといけない」という先頭に立つ意識。昨年までは実績、年齢の差から生じる遠慮があって言えなかったひと言、「やれよ」。それを今季は言い続けた。
 
 かつて鹿島が黄金期を迎えた時、チームには必ずディフェンスリーダーがいた。秋田豊、大岩剛、岩政大樹。彼らに共通するのは、小言が多かったことだ。耳が痛くなるようなことを平然と同僚に求めた。3人とも「チームが勝てるのなら、ひとりくらい嫌われ役がいてもいい」という考えの持ち主で、距離を置くチームメートがいてもまったく気にしなかった。岩政の背中を見てきた昌子も鹿島の門番になるべく、ひとつ殻を破った。
 
 当然、プレー面でも成長を遂げた。4バックの真ん中で、並み居る助っ人FWを力でねじ伏せてきた。第2ステージはチームとして失点が多かったが、持ち場ではFWに仕事をさせなかった。特に1対1でボールを奪う、攻撃を遅らせるという判断も的確で、何度もチームのピンチを救ってきた。
 
 その昌子が、Jナンバー1の得点力を誇る川崎を相手にする。今回のチャンピオンシップでは年間勝点で劣るため、引き分け以下で敗退が決まる。「うちの1点と相手の1点は重みが違う」と明かすように、先に失点せずに、先手を奪うことが突破へ向けて描く展開だ。この試合でチームメートに求めることは、ただひとつ。
 
「鹿島は常に王者でいた。でも、一番泥臭いチームでもあった。それをもっと表に出してもいいんじゃないか。戦う姿勢。気持ちが大事になる。チームで同じ方向を向いて戦いたい」
 
 昌子が「やれよ」と叫ばない展開になった時、鹿島に決勝進出の道が見えてくる。
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