【選手権予選】“赤き血のイレブン”浦和南が大健闘! かつての名門が見せた諦めない戦いぶり

2016年11月22日 川端暁彦

浦和東で日本代表GK川島などを育てた野崎監督が4年前から自らの母校に赴任。

決勝ではタイムアップ寸前に追いつく粘りを見せた。野崎監督も「よく追いついてくれた」と選手を称えた。写真:川端暁彦

 第95回高校サッカー選手権大会埼玉県予選決勝。「選手時代を含めて、一番県の決勝に出ていると思う」と語るベテラン・野崎正治監督に率いられた"赤き血のイレブン"浦和南は奇跡的な展開から前回王者・正智深谷を土俵際まで追い詰めたものの、最後はPK戦の末に敗退することとなった。
 
 野崎監督はかつて浦和南の選手として名を馳せ、指導者としては浦和東を全国大会を争う常連校にまで育て上げ、日本代表GK川島永嗣を筆頭に、坂本將貴、菊地光将、三島康平らを輩出してきた埼玉の高校サッカーを代表する指揮官である。24年にわたって浦和東を率い、2013年から母校の浦和南に監督として戻って来た。今季で就任4年目。「野崎先生の下でやりたい」と入ってきた選手たちが3年生を迎えた勝負の年でもあった。
 
 決勝戦は好ゲームだった。大舞台慣れした指揮官の存在が大きかったのか、埼玉スタジアムという箱の大きさに臆することなく選手たちは立ち上がりから躍動していた。FW高窪健人と直野椋太のパワフルな2トップを長いボールを使って活かすシンプル・イズ・ベストのスタイルは浦和東時代から一貫しているもの。
 
 正智深谷DF田村恭志(3年)が「本当に強さがある」と振り返ったとおり、ここまで大会無失点で来た正智深谷守備陣を再三脅かす攻めを見せたが、前半は無得点。そして後半に入ると相手に流れが渡って失点も喫したが、「選手たちには『粘ろうよ』と言ってこの大会はやってきた」と野崎監督が振り返ったとおり、ここからがタフだった。
 
 ロングボールを駆使しながら、CKとFK、そしてロングスローから相手を脅かす。秘密兵器として準備していたロングスローのスペシャリストであるDF山口翔大投入も功を奏し、後半アディショナルタイムにはこれまた途中出場のFW仁平大輔がヘディングシュートでゴールネットを揺らし、試合を五分に戻してみせた。迎えた延長戦でも熱く激しい攻防を継続。「伝統の力というのを感じた」と敵将・小島時和監督も舌を巻いた粘り強さが、そこにはあった。
 
 だが、これほどの奮闘を見せてなお全国には届かなかった。PK戦の末に、無情の苦杯。野崎監督は「私も選手たちもここに賭けていた」と言うだけに、取材に対しても「言葉が見付からない」と、絶句するほどに強く悔しさをにじませた。
 
「試合内容自体は褒められたものじゃないと思うけどね」とも言うが、同時に漏らした「最後、よく追い付いてくれた。今できる中の精一杯をやってくれた」という言葉のほうが、より実感がこもったものだった。
 
取材・文:川端暁彦(フリーライター)
 
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事