【日本代表】キーワードは"多様性"。最終予選の山場で見えたハリルジャパンの本質

2016年11月17日 飯尾篤史

重要なサウジ戦で、本田ではなく久保を先発させた意図とは?

10月の豪州戦と11月のサウジ戦。このふたつのビッグマッチで、ハリルホジッチ監督の本質が見えた。(C)SOCCER DIGEST

[ロシアW杯アジア最終予選]日本 2-1 サウジアラビア/11月15日/埼玉

 アジア最終予選で両極端なシチュエーションを迎えたことが、ハリルホジッチ監督のスタイルの本質をより鮮明にした。

 グループ最大のライバルとのアウェーゲームで最低でも勝点1をもぎ取りたかった10月のオーストラリア戦と、グループ首位とのホームゲームでなんとしても勝点3を掴みたかった11月のサウジアラビア戦――。
 
 オーストラリア戦では自陣に守備ブロックを築き、ロングカウンターを狙ったが、サウジアラビア戦では「強い気持ちとアグレッシブさを見せる」「攻撃して得点を取りたい」と指揮官が宣言していたとおり、素早いトランジションによってハイプレスをかけ、縦へ、縦へと攻撃を繰り出していった。
 
 4−2−3−1のシステムは同じでも、選手のチョイスと配置によって戦い方が変わる。対戦相手と試合の性質に合わせて戦い方を変える――これこそ、ハリルホジッチ監督のスタイルの本質だろう。
 
 サウジアラビア戦のあと、キャプテンの長谷部誠もこんなことを言っている。
 
「前回のブラジル・ワールドカップで、相手がどこであれ、自分たちのサッカーを貫こうとしたけど勝てなかった。そういうなかで、間にアギーレさんがいますけど、(ハリルホジッチ)監督が来て、相手のやり方によって臨機応変に戦っている。そういうことを予選で試しながらやっていくのはリスクもあるんですけど、オーストラリア戦もそんなに悪くなかったし、今日はうまくいったと思います」
 
 注目の右ウイングに起用されたのは、本田圭佑ではなく久保裕也だった。
 
 オマーン戦における本田のパフォーマンスは、特に攻撃面において悪いようには思わなかったが、サウジアラビア戦で求められたのが、攻守の切り替えのスピードや前線からのプレス、裏を狙う姿勢だったなら、コンディションやスタミナに不安を残す本田ではなく久保だったのは必然だ(前々日には浅野拓磨も右ウイングで試されている)。
 
 その久保がハーフタイムで本田と交代したのは、久保が右ひざを痛めたからだったが、リードした展開でゲームを落ち着かせるために本田とスイッチするプランは、もともとハリルホジッチ監督にあったに違いない。左サイドに流れた本田が起点となって、原口元気が決めた2点目のような攻撃パターンは、前半のうちには見られなかったものだ。

次ページ「縦に速い攻撃」を生み出す「舞台装置」にも様々なパターンがある。

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