【選手権出場校】兵庫・滝川二|指揮官が仕掛けた新たなふたつのトライ、そして分岐点となった春先の“事件”とは

2016年11月14日 森田将義

メンタルとフィジカルの強化にヒントが

例年にも増して一致団結している今年の滝川二。松岡監督(後列右端)にとっては初の選手権切符獲得だ。写真:森田将義

 名門・滝川二の礎を築いた黒田和生氏(現台湾代表監督)と、チームを選手権制覇に導いた栫裕保氏。華々しい歴史を作ってきたふたりの名監督のあとを継ぐのは容易いことではない。自ら「過渡期」と表現したように、就任2年目の松岡徹監督が掴んだ自身初の選手権出場は難産だった。
 
 「最後まで全力でプレーする、気持ちを込めてプレーするとか、これまでの滝川二らしさは変わらないけど、同じことだけをするのではなく新しいことにもトライしていこうと思った」
 
 指揮官のチャレンジのきっかけは、昨年末に遡る。7人制ラグビー日本代表のリオ五輪・銀メダル獲得を支えたメンタルトレーナー、荒木香織さんの講演を聞き、「いろんなヒントを得た」という。試合当日の挑み方や事前の準備を以前にも増して心がけるようになった。今回も決勝の5日前、選手たちを連れて試合会場のノエビアスタジアム神戸を見学。独特の雰囲気に慣れさせた。
 
 決勝では全国行きが懸かった緊張のある大一番にも拘わらず、立ち上がりから滝川二らしい前への推進力溢れる突破を随所で披露した。1得点・1アシストを記録したFW溝田大輝(3年)、チームの3点目をアシストしたエースMF持井響太(3年)など攻撃の主役が躍動し、4点を奪取。新たな試みの成果だろう。
 
 もうひとつの新たなトライは、対人の強化だ。
 
 インターハイに出場した8月以降は、明治大の総理大臣杯優勝を陰で支えたフィジカルトレーナー、鬼木祐輔氏の指導を定期的に受けはじめた。後半25分に市立尼崎のDF松井瞭太(3年)に1点を返されてからは肝を冷やす場面が続いたが、主将のCB今井悠樹(3年)を中心に身体を張ったディフェンスで耐えしのぎ、寸での所で2失点目を阻止。「最後のところで粘り強くなった」(松岡監督)のが、取り組みの賜物であるのは疑いがない。
 

次ページ一番変わったのは監督自身かもしれない

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