【日本代表】小林祐希の原点<4>19歳で10番、主将、移籍… そしてどん底からのリスタート

2016年11月12日 加部 究

トップ昇格から1年後には10番を背負いキャプテンに就任するが…。

11月シリーズでは、日本代表に復帰した小林。さらなる飛躍を遂げられるか。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 祐希世代が18歳を迎えた2010年、東京Vユースは快進撃を見せた。夏にはクラブユース選手権を制し(祐希はMVP)、さらには慶応大、横河武蔵野など大学や社会人の強豪を倒して、天皇杯の東京都代表の座を勝ち取るのだった。
 
「手のつけられない活躍でしたね。グラウンド中を走り回り、ドリブル、フィニッシュ、FKと、勝利に直結するパフォーマンスを見せ続けていました。とにかく練習でも真っ先にグラウンドに現われ、最後まで残ってボールを蹴っていた。そんな祐希の姿を見て、中島翔哉(現FC東京)も同じことをしていたんです」(中村忠・現FC東京コーチ兼U-23監督)
 
「もうユースでのゲームを見る限り、 同じ年代でやるべきことはすべてできてしまっていた。早くトップに触れさせないと成長速度が落ちてしまう。クラブとしても、そう判断して 参加させていました」(冨樫剛一・現東京V監督)
 
 こうして順調にトップ昇格を果たした祐希は、その1年後には10番を背負いキャプテンマークを巻くことになる。
 しかし、それは冨樫にとっても寝耳に水の出来事だった。
「10 番はともかく、キャプテンには本当にビックリでした。川勝良一監督から聞いた時は、エッと絶句しましたよ」
 
 冨樫は、川勝に聞き返した。 「で、祐希、どうでした?」「喜んでいたよ」――それは思い切り過ぎだろう。もう少し相談をしてくれよ――。
 
 冨樫は、そんな心の声をグッと呑み込んだ。
「祐希は非常に責任感の強い子です。でもまだチームを牽引し、動かしていく人としての膨らみは足りていなかった。難しい人間関係もあり、気がつけば喜怒哀楽がすっかり少なくなっていました。コーチとして何かできることはないか、どうしたら若いキャプテンを盛り立てていけるのか、いろいろ考えたんですけどね」
 
 結局、東京Vの新しい顔として飛躍するはずだった19歳のキャプテンは、その夏磐田へレンタル移籍する。
 
 ずっとこだわり続けた背番号は、一気に5倍(10→50)に増えた。

次ページ目標から5年遅れでようやく日の丸をつける。

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