【選手権出場校】青森・青森山田|番狂わせは起こさせない!! 20連覇達成の名門はなぜ県予選で負けないのか

2016年11月06日 小林健志

激しくプレッシャーを掛け、開始わずか2分で先制

ゴールを決めた鳴海⑪とハイタッチするキャプテンの住永。個性派軍団をまとめ上げた。写真:小林健志

 20年連続22回目の選手権出場だ。今年は石川予選で星稜が18年連続の出場を逃すなど、各地で伝統校・実力校が敗れるいわゆる「番狂わせ」が起きている。しかし、青森山田はそうしたアップセットとは無縁。11月6日に行なわれた青森予選決勝でも八戸学院光星を相手に4-0のスコアで、盤石と言うべき試合運びを見せた。
 
 これだけの長きに渡り、青森県大会で優勝し続けられる秘訣とはなにか。
 
 青森山田の黒田剛監督は「事故の起こりうるシチュエーションがある。1点差や0-0でずっと行ってしまうことが絶対ないようにしなければならない」と語る。伝統校・実力校の選手とはいえ、そこはやはり高校生。僅差の拮抗した状況が続けば、焦りからミスが起こっても不思議はない。
 
 では、それを起こさせないためにはどうするのか。答えは明快だ。「前半のうちに最低2点差をつけて、事故が起こったとしても勝敗に影響がないように選手たちにしっかり伝えています」と指揮官。早い時間に2点差、3点差にしてしまえば、選手のメンタルも安定していく。そのために「開始15~20分はどんどん前から行けと言いました。DFにプレッシャーがかかったぶん、相手にミスが出たのではないかと思います」。
 
 決勝では立ち上がりから激しいプレッシャーを相手にかけ、わずか2分で先制点をもぎ取った。キャプテンのボランチMF住永翔(3年)の縦パスを受けたFW鳴海彰人(3年)がDFのマークを外してフリーになり、易々とゴールを決めたのだ。その後1点差の時間がしばらく続き、カウンター攻撃も受けたがそこを耐え切って、38分に右サイドハーフの嵯峨理久(3年)のクロスから鳴海が相手DFに競り勝ってヘディングシュートを決め、リードを広げる。前半のうちに2点差にできたことで、あとは余裕を持って試合を運べた。まさに指揮官の理想とする試合展開だ。
 
 しかし、事故のような失点は高校生年代では起こりがちである。そのため黒田監督は「守備に人数をかけるのではなく、リスクマネジメントの質を上げていくことで対応しています」と守備の部分を強調した。
 
「ポジショニングとカバーリングを持続させる、サボらないことが大事です。堅守速攻の形を光星は貫いてきて(FWの)仲谷(樹/3年)にロングボールが出るとサイドに抜け出してくるので、そこを(DFの)橋本(恭輔/3年)につぶさせて(DFの)小山内(慎一郎/2年)がカバーできるようにして、それ以上来たら(GKの)廣末(陸/3年)が止めるという形で、3~4枚いればカバーできると思いました。それ以上人数を置くと攻められないのでやりません」
 
 橋本と小山内のセンターバックコンビの役割を明確にし、絶対的な信頼を置くFC東京に加入内定のU-19日本代表GK廣末にDFラインの背後のスペースをケアをさせる。三重の網をかけることで失点のリスクを最小限にとどめているのだ。「相当石橋を叩いて渡っているからね」と、黒田監督は笑みを浮かべながら語った。
 
 

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