【選手権出場校】群馬・前橋育英|どん底から這い上がったタイガーブラック軍団

2016年11月06日 安藤隆人

コンビネーションで崩す攻撃に磨きをかけて

風上に立った後半に勝負! 前橋育英は62分、MF飯島がDFラインを打破し、同点ゴールを決める。写真:安藤隆人

「個の力はある。あとはいかに組織として戦えるか」
 
 2016年初頭、山田耕介監督がこう評していたように、今年のチームは決して力がないわけではなかった。しかし、プリンスリーグ関東では開幕戦こそ勝利を収めるも、その後に5連敗。この悪い流れを引きずったまま迎えたインターハイ予選では初戦で常盤にまさかのPK戦負けを喫した。
 
「あのときはみんながそれぞれ個でなんとかしようとしすぎてしまった。噛み合うときはいいけど、1点取られたりすると、よりその色が強くなってしまい、さらに流れが悪くなってしまった」と話すのは、キャプテンのMF大塚諒(3年)だ。
 
 チームはどん底まで落ちた。だが、底まで落ちてあとがなくなったことで、選手たちは「大事なこと」に気が付く。それが、冒頭の山田監督の言葉だ。大塚はこう振り返る。
 
「昨年のイメージが強すぎたのかもしれない。昨年のチームは前線に個の強い選手が揃っていて、そこに預ければなんとかなった。でも、今年はより組織で戦わないといけないのに、そうならずに不利になるとバラバラになってしまった。インターハイ予選で負けたことで、全員で組織的にバランスを考えながら、コンビネーションで崩すことの重要性を認識し直すことができた」
 
 這い上がるために、なにが必要かを全員が見つめ直したのだ。そこからは徹底してコンビネーションで崩す攻撃に磨きをかけた。さらに試合では相手の守備陣形を見ながら、サイドなのか、中央なのか、それとも裏なのかを的確に選択。全員でイメージを共有し、効果的なコンビネーションを繰り出せるよう、組織力を伸ばしていった。
 
 結果、プリンス関東では再開後、6勝1分け3敗と盛り返し、今予選も初戦から苦戦を強いられながらも、着実に決勝まで駒を進めた。
 
 そして、前橋商との伝統の"群馬クラシコ"となった県予選決勝。風下の前半は前橋商の鋭いカウンターの前に思うように攻撃を組み立てられず、23分に先制点を許す展開となったが、それで崩れることはなかった。風上に立つ後半に勝負。全員が同じ絵を描いていた。
 

次ページ2か月後、彼らはどんな色彩を放つのか

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