「未知なる敵」と「頑張る糧」。U-20W杯出場を勝ち取って実感できるあまりに重要な意義

2016年10月26日 浅田真樹

例えば塩谷司が五輪前にナイジェリアの選手と対戦していたら…。

5大会ぶりのU-20W杯出場権を掴んだ日本。来年の本大会ではどんな戦いを見せてくれるだろうか。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 U-19日本代表が5大会ぶりとなるU-20ワールドカップ出場を決めた。日本サッカーの地盤沈下が心配されるなか、ユース世代が長年越えられなかったハードルを、ついにクリアしたことの意義は大きい。
 
 U-20ワールドカップ出場において何より重要なのは、高いレベルでの国際経験を積めることだろう。極東に位置し、世界レベルのサッカーに直接触れる機会が限られる日本にとっては、特に貴重な場となる。
 
 リオデジャネイロ五輪で敗退した後、遠藤航が「自分たちにとっては成長した3試合だったが、世界を経験していない経験不足がこの大会で出た」と語っていたが、その不足を補うことが第一の意義である。
 
 U-19日本代表メンバーのなかでは、J1での公式戦出場経験が最も豊富な中山雄太でさえ、U-19アジア選手権について、「Jリーグにないものを持っている選手はたくさんいた。一瞬の速さでは、Jリーグでやっている日本人選手よりも速いと感じたし、自分の経験値が上がった」と話していたが、舞台が世界となれば、その比ではない。技術的には粗削りでも、度肝を抜かれるようなスピードを持った選手は世界中に数多く存在する。
 
 そうした選手の力を肌で感じることは、常に高い目標を与えてくれて、今後の成長につながることはもちろんだが、免疫をつけておくという意味でも重要だ。
 
 例えば、リオデジャネイロ五輪にオーバーエイジ枠で出場した塩谷司が、ナイジェリアに敗れた後、相手FWを評して「今までに対戦したことのないタイプだった」と話していた。だが、もし塩谷が事前に同じような経験をしていたら、どうなっていたか。つまり、国際経験がもたらす効果とはそういうことだ。
 
 これから上の世代、すなわち五輪代表やA代表にステップアップした時、海外勢と対戦しても面食らうことなく、普段どおりに自分の能力を発揮できる。そうなるための準備においても、この年代で世界を経験しておくことは大切な要素となる。
 
 とはいえ、U-20ワールドカップに出場することの意義は、実際に出場した選手のみに生まれるわけではない。
 
 個人的には、むしろこれこそがU-20ワールドカップに出場することの重要な意義だと考えているのだが、ここで出場権を獲得したことにより、来年5月開幕の本大会までの間、世代全体が刺激されるのである。
 

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