【湘南】その一体感は色褪せない――J2降格もブーイングはなく拍手が送られたわけ

2016年10月24日 隈元大吾

湘南らしい攻撃的なサッカーは序盤戦から随所に示されていた。

来季のJ2降格が決まった湘南。しかし、サポーターからブーイングはなく、拍手が送られた。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

 山田直輝のヘディングシュートがクロスバーを越えて間もなく試合終了を告げる長い笛が響いた。J1残留に向け、今季残された3試合すべてに勝つことが必須だったなかで、しかし湘南は今節大宮に2-3で敗れ、来季をJ2で迎えることが決まった。
 
 今季の厳しい結果の要因を端的に語るのは難しい。たとえば、開幕間もない2節・川崎戦がいまなお印象深い。DF岡本拓也がオーバーラップから、同じく3バックの一角を務める三竿雄斗のアシストでゴールを奪った場面に象徴されるように、チームに新たな顔ぶれが並んだなかでも湘南らしい攻撃的なサッカーはシーズン序盤から随所に示されていた。
 
 だが4-4で決着したこの川崎戦然り、2-2で終えた翌節の広島戦然り、リードしてゲーム終盤を迎えながら、後半アディショナルタイムに失点し、勝点3を逃がす脆さも同居した。相手による研究は昨季よりも進み、攻めてはチャンスを作りながらも得点に結びつけられず、かたや一瞬の隙を相手に突かれてしまうなど、両ゴール前の精度という課題も次第に浮かび上がる。
 
 3月の終わりには菊地俊介が右ヒザ前十字靭帯損傷の大怪我を負った。ボランチで副キャプテンを担う背番号2の長期離脱が逆風を強めたことも否めない。
 
 なかなか結果を見出せない苦しい道のりのなかで、リーグ戦初勝利は開幕から約2か月、9節・横浜戦まで待たなければならなかった。気持ちを前面に出してもぎ取った1-0のこの勝利以降、第1ステージ終盤には4試合負けなしを記録するなど持ち直したが、第2ステージに入り、勝利は再び遠のいてしまう。内容自体は悪くないゲームを続けながらも、結果が出ないジレンマのなかでアグレッシブな姿勢は徐々に薄れ、相手の先取点が重くのしかかり、さらに失点を重ねる試合も少なくなかった。
 
「降格してしまった責任は、選手には1パーセントもない」曺貴裁監督は責任を一身に背負う。
 
「僕がやらせたことに対する結果として残れなかったと思っている。今年のチームが良さを出せばJ1のなかで生き残っていけると信じて始め、その点に関して、言ったことをいまも変えるつもりはない。いろんなやり方があったなかで、連敗中でも毎日トレーニングし、厳しいことを言われても立ち上がってきた彼らの不屈の精神に僕は拍手を送ってやりたいし、そうやってきた今年に後悔はありません」
 

次ページ湘南というクラブが大切にすべきことを寄り添う人たちはみな分かっている。

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