【選手権予選】7年ぶりの檜舞台まであと2勝。名門・帝京、復権への道

2016年10月16日 川原 崇(高校サッカーダイジェスト)

そして、地道な反攻作戦がはじまった

チーム最大の得点源がこのCF中瀬。3戦連続弾で、チームを4強へと導いた。写真:川原崇(高校サッカーダイジェスト)

 帝京が好調だ。
 
 10月15日、高校選手権・東京都予選Bブロックの準々決勝が行なわれ、帝京は今夏のインターハイに出場した強豪、東海大高輪台と対戦。後半6分にFW中瀬大夢(3年)が挙げた虎の子の1点を守り切り、ベスト4に駒を進めた。7年ぶりの悲願達成──選手権出場──まで、あと2勝だ。
 
「もう毎試合が決勝戦のようです。今日は内容がまるで良くなくて、負けてもおかしくなかった。でも次まで3週間(準決勝は11月6日)。もう一回やり直せるのはありがたいです。命拾いしました」
 
 そう謙虚に語るのは、就任3年目の日比威監督だ。
 
 個人的には久方ぶりの再会だった。以前は有名なマネジメント会社に勤務し、名波浩氏や三浦俊也氏など現役選手やサッカー解説者をサポートする立場。当然、サッカーメディアとの親交が深かった。業界で辣腕を発揮していた日比氏が一念発起したのが4年前。OBである帝京高校サッカー部が存亡の窮地に立たされていると聞き、奮い立ったのだ。荒谷守監督(現アドバイザー)の下でコーチを務め、2014年にはその座を引き継ぐ。名門復活への土壌を着々と積み上げてきた。
 
 就任1年目の選手権予選は初戦敗退の憂き目に遭い、昨年度は東京Bで決勝に進出するもPK戦で涙を呑んだ。過去3度制覇のインターハイは6年連続で出場を逃がし、同じく6度の優勝を誇る選手権は2009年度以降、本大会にエントリーしていない。惜しいところまで行くが、なかなか全国の扉をこじ開けられないでいるのだ。日比監督は「よく言われるのは、3年出れなければ初出場と同じ。いまの帝京はチャレンジャーでもない、普通のチームなんです」と語る。たしかに、伝統のカナリア軍団を"古豪"と見る向きも少なくない。
 
 地道な反攻作戦がはじまった。指揮官が就任直後から積極的に取り組んできたのが、中学年代のスカウティングだ。スタッフが様々な場所に散らばり、辛抱強く好タレントの勧誘を続けた。かつて後光がさしていたそのブランド力は頼りにできない。ジュニアユース年代の指導者にビジョンを丁寧に説明し、頭を下げ、これはと思った選手の元には幾度となく足を運んだ。弛まぬ努力が結実したのが、今年の春だ。FC東京U-15の2チーム(深川とむさし)から合わせて6名が入部し、地球の裏側からブラジル人の韋駄天FWサントス・オリベイラ・ランドリックを連れてくるなど、他校が羨むような逸材たちを迎え入れたのである。
 
 春先は、ボールスキルに長けた新入生たちを中心に分厚いポゼッションを展開し、アクションスタイルを貫いた。インターハイ予選は決勝トーナメントを前に早期敗退を余儀なくされ、いまひとつ結果が伴わないなか、下級生の突き上げに触発され、尻上がりに調子を上げたのが3年生たちだ。夏以降は彼らを軸にインテンシティーの高いサッカーも追求。その攻守両面のエネルギッシュなスタイルが、一発勝負の選手権予選で効果を発揮する。

 2次トーナメント1回戦で昨年度の選手権本大会準優勝校、國學院久我山を1-0で下すと、2回戦は修徳を相手に4-1の快勝。そして土曜日、東海大高輪台との準々決勝は中盤での激しい潰し合いでつねに優位性を保ち、勝ちに徹したサッカーで強豪を封じ込めた。GK和田侑大(2年)、CB菅原光義(2年)、ボランチの五十嵐陸(3年)、トップ下の遠藤巧(3年)、そしてCF中瀬らで構成するセンターラインは、強固そのものだ。
 
 

次ページ胸に輝く9つの星を見つめながら

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事