【浦和】最後のPKキッカーがいい? 遠藤航を支えた“イメージ”と“メンタル”

2016年10月15日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

「慎三さんとズラが手を挙げて、タイミングを失ってしまった(笑)」

ペトロヴィッチ監督の指名した5人が立候補で順番を決定。遠藤は、「『決めたら勝ち、外したら負け』くらいの割り切り、そういうメンタルのほうがやりやすい」という。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

[ルヴァン杯決勝] G大阪1(4PK5)1 浦和/10月15日/埼玉スタジアム2002

【ルヴァン杯決勝 PHOTO】G大阪 1(4PK5)1 浦和|激闘の末浦和が13年ぶり2度目のリーグカップ制覇!
 
 ボールがゴールネットを揺らせば、念願のタイトル獲得――。自身のキックが、勝敗を分ける。そんなシチュエーションでも遠藤航は平常心に近い状態にあった。
 
 120分間でも決着が付かず、迎えたPK戦。G大阪の4人目が外し、4-4の状況で遠藤は両チーム合わせて10人目のキッカーとしてペナルティスポットに向かった。
 
「蹴る5人は(ペトロヴィッチ)監督から指名された。順番は立候補。ひとり目は阿部(勇樹)さんだなと思っていたし、僕はACLの時にふたり目だったから、今回も同じかなと。
 
 でも、(興梠)慎三さんとズラ(ズラタン)が手を挙げて、僕は挙手するタイミングを失ってしまった(笑)。でも、そこはふたりに任せて、残っている4人目と5人目だったら、後者がいいかなと。そしたらチュン君(李忠成)が4人目で手を挙げた」
 
 なぜ、最後のキッカーが良かったのだろうか? どの順番で蹴るのであれ、もちろん大きなプレッシャーは襲ってくる。その中でも、"ラスト"は計り知れない重圧ではないのか。
 
「5人目は試合を決める状況になる可能性が高い。そのほうが、自分のなかではイメージがしやすかった。『決めたら勝ち、外したら負け』くらいの割り切り、そういうメンタルのほうがやりやすい」
 
 強靭な精神力が、最終ラインで奮闘した男を支えていた。さらに「(西川)周作君が止めたガンバの4人目くらいから、『自分が決めて勝つ』瞬間をずっとイメージしていた」という。おかげで、「蹴る瞬間は落ち着いていた」のだから恐れ入る。
 
 さらにもうひとつ、彼に"勇気"を与えてくれたものがある。それが、スタジアムを真っ赤に染めて、地鳴りのような声援を送り続けてくれたサポーターの存在だ。
 
「歩いている時に仲間が声を掛けてくれたり、あとはサポーターのみなさんの声だったり、いろいろな人の想いをその瞬間に考えた。それが自分に『蹴る勇気』を与えてくれた」
 
 助走に入る、踏み込む、ボールを蹴る。ゴール右を狙った遠藤のシュートが、逆に飛んだGKに触れられることなくゴールに吸い込まれる。勝者と敗者が分かれ、赤いユニホームを身に纏った選手、サポーターは歓喜の渦に包まれた。
 
 まさに、みんなで戦い、みんなで勝ち取ったタイトルだ。そして、この日幾度となくスタジアムに響き渡った「We are REDS!!」の大合唱。10人目のPKキッカーによって、その言葉は見事に体現されていた。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
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