【藤田俊哉の目】本田が俊輔から奪ったように――。清武、原口らロンドン世代が主役となるには…

2016年10月08日 サッカーダイジェストWeb編集部

逆転ゴールの光景に日本代表の現状が凝縮されていた。

苦しんだ末に奪った決勝点。そのピッチに北京世代の主軸の姿はなかった。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 ロシア・ワールドカップのアジア最終予選、第3戦のイラク戦。後半ロスタイムの山口の決勝ゴールによって日本は2対1で勝ち、勝点3を手にした。
 
 多くの新聞メディアが報じていたように、結果によってはハリルホジッチ監督の進退問題が浮上しかねなかったのだとしたら、窮地を救った山口は大きな仕事をした。指揮官にとっても最高のゴールと言える。あのゴールが決まっていなかったら、ホームで2戦未勝利という状況を招いていたのだから。考えたくもないが、そうなれば深刻な事態だったと言えるだろう。
 
 印象的だったのは、山口のゴールが決まった瞬間だ。あのシーンはいろんなことが凝縮されていたように感じた。
 
 ひとつ目の光景は、日本のベンチの選手たちが飛び出して、ピッチの選手たちと喜びを爆発させていたことだ。ハリルホジッチ監督はスタッフや選手たちと抱き合い、選手以上に喜んでいた。劇的なエンディングだったとはいえ、あれほど喜ぶのは、日本のチームを指揮してから初めてだったんじゃないかな。日本がかなり苦しい状況だったことを物語っていた。
 
 あのような劇的なゴールが生まれ、劣勢のなかで勝利を掴んだりすると、それまでのネガティブな流れが一変し、チームに大きな変化をもたらすこともできるし、なにより自信回復につながるものだ。それらを繰り返してチームは本当に強くなるもの。そう考えると、これまでの日本代表とは違ったチームに生まれ変われる"きっかけ"を掴めた試合になった。
 
 その意味でも山口のゴールは非常に価値がある。最終予選で苦戦が続き、波に乗れなかった日本にホームゲームで大きな勝点3を手繰り寄せてくれたのだから。この日のMVPは、もちろん山口だ。後に振り返った時に、最終予選でのターニングポイントになったゴールと言われるかもしれないね。
 
 あのゴールが決まった瞬間で印象的だったもうひとつの光景は、これまでずっと主力として活躍してきた、本田、香川、長友、岡崎の4人が揃ってベンチにいたことだ。

次ページ群を抜いていた原口のシャープさと清武の存在感。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事