セビージャで瞬く間に「王様」に。天才ナスリが息を吹き返す

2016年10月05日 豊福晋

グアルディオラも最後までナスリのシティ残留を望んでいた。

組織がまだ出来上がっていないチームのなかで、ナスリの技術と状況判断の良さは大きな武器。味方の使い方もうまく、ゴールを奪うための位置取りもさすがである。 (C) Getty Images

「セビージャでプレーする喜びをもう一度かみしめたい」
 
 現在、7節を終えた時点でリーガ・エスパニョーラの3位につけている好調セビージャの中心にいるのが、移籍市場最終日にチームにやって来たサミア・ナスリだ。
 
 例年と同じく、チームには今夏も多くの選手がやってきたが、そのなかでもナスリは際立った活躍を見せている。
 
 テクニックは、今もトップクラス。最後にチームに合流したにもかかわらず、すでに一番ボールが集まるのは彼だ。
 
 ポジションはあってないようなもの、いわばフリーマンである。前線で自在に動き、パスで味方を操る。
 
 かつてのように、ドリブルで相手を何人も抜いていくというプレーはもはや見られないが、独特の間合いは相変わらずで、ボールの置き所も絶妙。単調な攻撃が多いセビージャのなかで、うまくタメを作っている。
 
 チャンピオンズ・リーグのリヨン戦(1-0で勝利)では、攻撃だけでなく自陣に戻って守備に奔走するなど、随所で貢献を見せて、ファンの心を掴んだ。
 
「セビージャでのシーズンに賭けている」と語るように、モチベーションはこれまでのマンチェスター・シティでの数年間よりも、明らかに高い。
 
 昨シーズン、ナスリは負傷もあって約半年間、ピッチに立つことができなかった。このこともあり、彼を、ピークを過ぎた選手、と見る向きも少なくなかった。
 
 ナスリのセビージャ移籍に関しては、「ハードワークをしないため、ジョゼップ・グアルディオラの構想に入らなかった」と考えている者が多い。
 
 しかし実際のところは、ナスリ自身が「レンタル移籍を決める最後の瞬間まで、監督は僕の残留を望んでくれた」と明かしているように、シティの新指揮官はナスリを選手として評価していた。
 
 とはいえ、当然ながら、グアルディオラの下で絶対的な中心選手になれるという確証はない。常に先発として試合に出ることはできない……その点をナスリ自身は考慮して、レンタルを決断したのだろう。半年間ピッチから遠ざかっていただけに、今シーズンこそは常に主役としてプレーしたかったのだ。

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