【大宮】「常にリスペクトしている」。不屈の守護神・塩田仁史を支えている“愛”の存在

2016年09月26日 古田土恵介(サッカーダイジェスト)

6分に迎えたPK。向けられた大声援にある想いが。

PKではキッカーへのブーイングではなく、自身へのチャントが鳴り響いた。それに対して「リスペクトに値する」と誇らしさを感じているようだった。写真:田中研治

[J1第2ステージ13節]大宮 1-1 鳥栖/9月25日/NACK
 
「感謝しているし、常にリスペクトしている」
 
 この日、大宮のゴールマウスを守った塩田仁史はそんな言葉を口にした。それは味方選手でも、相手選手でもなく、大声援で後押ししてくれたサポーターに向けられていた。
 
 6分、いきなりPKのピンチを迎える。キッカーは、昨季まで大宮に所属していた富山貴光。自身で奪ったファウルということもあって、静かにボールをセットした。
 
 その時、スタジアムに鳴り響いていたのは「塩田、塩田仁史、ラララーラーラー、ラララーラララー」というチャントだった。
 
「あれが大宮サポーターのいいところ。富山にブーイングをするんじゃなくて、僕に声援をくれた。他のサポーターだったら、キッカーにプレッシャーを与えるためにブーイングをするかもしれない。けど、自チームの選手を応援した。あの行為は本当にありがたい」
 
 所属2年目だが、「もう一回プレーヤーとしてチャレンジするチャンスを与えてくれた」とクラブへの思い入れは強い。
 
 だからこそ、同じく大宮を愛するサポーターが、相手への威嚇ではなく、味方へ向けて声を張り上げたことを誇りに感じたのだろう。
 
 そして、その意味を理解しているからこそ、後押しを受けていたからこそ、先制点を与えてしまった結果に対して唇を噛む。
 
「僕があそこで止められていたら勝てていたと思う。それだけに悔しい」
 
 大宮への愛を叫ばずにはいられないサポーターのように、塩田もサポーターへの愛を口にする。オレンジと紺の勇者を誇りにするサポーターのように、塩田もサポーターへの誇りを口にする。
 
 どちらかがどちらかを支えているのではなく、両者が支え合っている。ピッチの内と外。立場は違えどともに戦う、そんな関係がきっと勝利を手繰り寄せるのだ。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
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