クオリティを損なうことなく、強度が増した――まるで何人ものペドリがプレーしているような…【現地発コラム】

2025年12月10日 エル・パイス紙

平凡な選手には時間がなく、クラックには時間が余っている

別次元のテクニックで中盤を支配するペドリ。(C)Getty Images

 スピード化が進む現代フットボールの犠牲となって、パウサ(スペイン語でタメ、間という意味)は消えたと言われるが、それは嘘だ。パウサはこれまでと同じくらい存在している。ただ、そのすべてをペドリが独占しているだけだ。

 パウサとは、プレーの流れを減速させて時間と空間を再構築する個人技の1つだ。理解が難しいだけでなく、実行も難しい。これは最も有能なタレントが活用するコンセプトであり、スピードと同じくらい相手DFのバランスを崩す。フットボールにおいて減速は信じられないほど時間を稼ぐために役立ち、その定義が示すように、隠れていたスペースを作り出すために有用だ。

 少し前に、ペドリは『エル・パイス』紙のインタビューで、あまり注目されなかったある発言をしている。

「選手は常に自分が思っているよりも1秒多く時間を持っている」

 これは彼のプレーと、特別な才能を持つ選手たちの最も繊細な強みを表現する素晴らしい言葉だ。平凡な選手には時間がなく、クラックには時間が余っている。
 
 ペドリは主戦場の中盤で周りを囲まれる中でも、急ぐことなくコマのように回転し、相手の虚を突いて猫のようなリズミカルな動きで置き去りにする。密集の中では通常、少し慌てふためくものだが、ペドリの場合はそうではない。彼は、水晶のように絶対的な方向感覚を持っている。

 そのエリアで彼は攻撃のリズムを作る。時には減速させ、時には加速し、常に状況をクリアにする。そして組み立てに関与しながら、ファイナルサードに入ると、彼のアイデアは、目指すべきゴールがあることを思い出したかのように突然広がりを見せる。別のペドリの出番だ。

 戦略家として振る舞っていたMFが、創造的な使命を持って不確定要素を生み出すメディアプンタ(トップ下)へと変貌を遂げる。プレーに鋭さを加えるのだ。長短のパスを織り交ぜながら、左右に揺さぶるサイドチェンジを駆使してラフィーニャとラミネ・ヤマルにボールを供給し、混雑したエリアで彼だけが発見した隙間へパスを通し、ネットにパスをするように自らゴールを決める。どんな場面でも控えめな態度で、自分の天才性を誇示するのではなく、子供のような真剣さでプレーする。
 

次ページ彼を一目見て気に入った

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事