相手を吹き飛ばし、鋭いスルーパス。場内からは割れんばかりの拍手。逆転負けのパレスで鎌田大地は攻守に奮闘。過密日程の12月はコンディション維持がポイントに【現地発】

2025年12月01日 田嶋コウスケ

指揮官も悩む「選手たちは疲労困憊だ」

マンU戦に先発した鎌田。安定感の高いプレーで攻守に奮闘した。(C)Getty Images

 クリスタル・パレスが、マンチェスター・ユナイテッドに逆転負けを喫した。

 日本代表MF鎌田大地が所属するパレスは11月30日、ホームにユナイテッドを迎え、1-2で競り負けた。試合では、パレスが36分にPKで先制。しかし後半に入ると、チームが目に見えて失速し、いずれもセットプレーを起点に2つのゴールを許した。

 ただ9月、10月とクラブの月間MVPに2か月連続で選ばれている鎌田は、この試合でも先発して安定感の高いプレーを披露。攻守に奮闘していたが、1点ビハインドの85分に交代となった。

 パレスはとにかく疲労の影響が大きかった。試合の3日前に敵地でフランス東部のストラスブールとカンファレンスリーグを戦った。1-2で逆転負けを喫したナイトゲームを消化した後、空路でロンドンに移動。中2日で今回のユナイテッド戦を迎えたのである。

 一方のユナイテッドは、試合の6日前にホームでエバートンと対戦していた。欧州カップ戦には出場しておらず、プレミアリーグだけに集中すればよく、結果として後半の逆転劇に繋がったように思えた。

 実際に試合後の両指揮官も、この点を指摘した。ユナイテッドのルベン・アモリム監督が「前半の最後の10分間、パレスは苦戦していた。後半も苦しむだろうと感じていた」とし、前半の終盤からパレスに本来の力がなかったと述べた。またパレスのオリバー・グラスナー監督も「ご覧のとおり、多くの試合でフレッシュさが足りず、エナジーレベルも落ちている」と疲労の影響があることを認めた。
 
 さらにグラスナー監督は「薄い選手層に苦しんでいるか?」との質問に対し、「そう思う。それが問題」と答えた。「この件についてこれまで言及してこなかったが、正直言って、今が話すべきタイミングだと思う。選手たちは疲労困憊だ。私は選手をプロテクトしたい。夏に十分な補強ができなかったし、12月中旬からアフリカ選手権で選手を失う」と続け、現状の厳しさに加え、冬の市場で補強の必要性を訴えた。

 前半、攻撃的MFのイスマイラ・サールが怪我を抱え、38分の早い時間帯で交代した。しかし代わりに入った元アーセナルのFWエディー・ヌケティアが大ブレーキ。動きにキレがなく、パス回しにも効果的に絡めなかったことが、後半失速の一因となった。

 元々、パレスは選手層が薄く、レギュラーと控えの戦力格差も大きい。過密日程に入ったところで2試合連続の逆転負けを喫したのは、決して偶然ではないだろう。ここから年末年始にかけて週2試合のペースで進んでいくだけに、12月はパレスにとって正念場となる。

 ただ、3-4-2-1のセントラルMFで先発した鎌田は、疲労の影響を感じさせなかった。ストラスブール戦ではローテーションでベンチスタートにまわり、82分から途中出場した。中2日のユナイテッド戦、鎌田が試合前のフラッシュインタビューで「自分はストラスブール戦であまり出ていないので、コンディション的には問題ないと思います」と答えていた通り、攻守に存在感を示した。

 19分には、身体をうまく入れてアマド・ディアドを吹き飛ばしてボールを奪い切り、右サイドに鋭いスルーパスを供給。ホームスタジアムの場内から、割れんばかりの拍手が沸き起こった。

 24分には、ブラジル代表MFカゼミーロがプレスに来たのを察知し、ワンタッチでボールを叩いてプレスをきれいに剥がした。味方がパスをテンポ良く繋いでいる間に、鎌田はゴール前に猛突進。クロスボールにダイレクトで合わせてシュートしたが、GKに阻まれた。8分にも、チャンスと見てゴール前に侵入したシーンがあったように(※この場面はジャン=フィリップ・マテタがシュートを選択)、積極的にゴール前に顔を出した。
 

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