クレスポ、ラモン・ディアス、パレルモ…かつての名FWが「守備」に活路を!ブラジル1部で増えるアルゼンチン人監督【現地発】

2025年11月28日 沢田啓明

「ビエルサから学んだ」クレスポ監督のスタイルとは?

サンパウロで指揮官としての評価を高めているクレスポ。(C)Getty Images

 11月末時点で、ブラジル1部リーグに所属する20クラブ中8クラブが外国人指揮官のもとにあり、そのうち6人がアルゼンチン人で、さらにうち3人がかつて世界に名を馳せた元ストライカーだ。
 
 例えばサンパウロを率いるエルナン・クレスポ(50歳)は、リーベル・プレートでキャリアをスタートさせ、パルマ、インテル、チェルシーといったトップクラブでゴールを量産。アルゼンチン代表としても長く第一線で活躍した後、2012年に現役を引退。以後、指導者の道へと進み、イタリアやアルゼンチンのクラブで監督キャリアを積むと、21年から率いたサンパウロでチームを州選手権優勝に導き、中東の2クラブで監督を歴任した後、25年6月にサンパウロに復帰した。
 
 採用するシステムは3-4-3。「マルセロ・ビエルサから学んだ」と語るように、マンマークをベースに運動量で相手を圧倒するスタイルを志向する。ブラジル全国リーグでは順位を就任時の14位から8位へと押し上げ、メディアとファンからの評価は上々だ。
 
 注目すべきは彼だけではない。かつて日本でプレーした元スターもまた、ブラジルで指揮を執っている。ラモン・ディアス(66歳)だ。1993年からJリーグ横浜マリノスに在籍し、22得点を挙げて初代得点王に輝いた名手だ。彼もリーベル・プレートの出身で、小柄だが敏捷なテクニシャンだった。1982年から1991年までは活躍の場をヨーロッパに移し、フィオレンティーナ、インテル、モナコなどでプレー。アルゼンチン代表として1982年ワールドカップにも出場した。
 
 1995年に指導者に転身し、母国アルゼンチンだけでなく、イングランドや中東、ブラジルのクラブで采配を振るった。そして今年9月末、南部の強豪インテルナシオナウの監督に就任。守備を強化して失点は減らしたが、得点も減って、11月末まで3勝5分け3敗。就任時から順位をひとつ落として15位に沈む。降格圏の17位とは勝点3差。3試合を残していて、12月3日にはクレスポ率いるサンパウロと対戦する。
 エキセントリックな言動から「エル・ロコ」(クレイジー)と呼ばれたマルティン・パレルモ(52歳)も、ブラジルのクラブで指揮を執るひとり。現役時代はボカなどで大型CFとしてゴールを量産し、2010年ワールドカップにも出場。11年に現役を引退し、翌年から指導者となってアルゼンチン、チリ、メキシコなどのクラブを率いた。
 
 今年9月中旬、20チーム中19位に沈んでいた地方クラブ、フォルタレーザの監督に就任。高い位置からのプレッシングを植え付けて失点を大幅に減らし、3勝7分け12敗と負け続けていたチームを5勝3分け4敗と立て直した。順位は20チーム中18位で、残留ラインの16位とは勝点5差だが、消化試合が1試合少ない。「奇跡の残留」へ向けて、地元メディアとファンから大きな期待を寄せられている。
 
 3人は選手としては揃って優秀なアタッカーだったが、監督としては守備に主眼を置く現実的な戦い方でまずまずの成果を上げているのが興味深い。
 
文●沢田啓明
 
【著者プロフィール】
1986年にブラジル・サンパウロへ移り住み、以後、ブラジルと南米のフットボールを追い続けている。日本のフットボール専門誌、スポーツ紙、一般紙、ウェブサイトなどに寄稿しており、著書に『マラカナンの悲劇』、『情熱のブラジルサッカー』などがある。1955年、山口県出身。 

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