今までの「おさらい」に終始したボリビア戦。異常なまでの勝利への固執ぶり。気になるのは鎌田大地のボランチ固定傾向だ

2025年11月19日 加部 究

勝ち続けることこそ本当に怖いのかもしれない

ボリビア戦で1得点の鎌田(15番)。主戦場はシャドーであるべきだ。(C)SOCCER DIGEST

[国際親善試合]日本 3-0 ボリビア/11月18日/国立競技場

 ホームでのボリビア戦は比較的、低リスクで様々な実験が可能なはずだったが、結局、今までの「おさらい」に終始した。

 確かに4日前のガーナ戦からスタメンは7人入れ替わったが、すべてお馴染みの顔ぶれで、逆に2戦連続での早川友基の起用や後半開始から堂安律、また早いタイミングで上田綺世、中村敬斗を次々に送り込む采配は、親善試合にしては異常なまでの勝利への固執ぶりだった。

 メディアが主導して代表監督100試合到達を喧伝した影響があったのかもしれないし、反面「ファンに勝利を届ける」のが最大のサービスだと考える森保一監督の真摯な姿勢の表われと見て取ることもできる。

 率直に日本が史上最強だとしても、まだ個の総和だけでは世界の頂点には届かない。そこで不可欠なのが連動したアグレッシブな守備で、その浸透度合いは重要な武器だ。実際、ボリビア戦の序盤で明暗を分けたのも前がかりな強度の高い守備で、開始直後に南野拓実のプレスバックから鎌田大地のスルーパスを導き、小川航基の決定機を築くと、さっそく2分後には先制に成功し主導権を握った。

 ボリビア代表のオスカル・ビジェガス監督も「ブラジル戦を見て、日本が強度の高い守備をしてくるのは分かっていたけれど、対応し切れずダメージを被った」と振り返っている。また森保監督も「相手が対策を練ってきても、ハイプレッシャーには行く」と強調した。改めてブラジルやボリビアなどの南米勢との対戦では、スペースを与えない果敢な守備は文化的な相違とも映った。
 
 だが勝負の世界は残酷なもので、「最強」と賞賛され期待値が沸点に達した途端に瓦解したケースは枚挙に暇がない。20世紀には、1954年のハンガリーも1974年のイタリアも、肝心のワールドカップで無敗神話が脆くも途切れた。

 ピークがある以上、常に代謝を図り、成長し続けない限りどこかで下り坂が訪れる。そういう意味では、勝ち続けることこそ本当に怖いのかもしれない。ワールドカップ本番でピークを作るには、大会期間中でも輝きを増していくようなシンデレラボーイがひとりでもふたりでも欲しいところだ。

 ボリビア戦後の森保監督は「主導権を握って勝つのも大切だが、どんな内容でも勝つ。また誰が出ても勝つ。誰と組んでも機能する。その点で良いチャレンジをしてくれた」と振り返った。しかし裏返せば、すでに機能することが立証済みの組み合わせしか送り出していないという見方もできる。
 

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