J2クラブ内定ボランチが飛ばした激「インターハイを思い出せ」。全国に導く決勝弾。選手権連覇に「一つひとつしっかり戦っていく」

2025年11月18日 安藤隆人

3年間で培ってきた『利己と利他』

「相手が一番怖がるプレーとは何か」を重視する柴野。選手権で連覇がかかる前橋育英の絶対的な主軸だ。写真:安藤隆人

 値千金の決勝弾は、MF柴野快仁の頭から生まれた。11月16日に行なわれた選手権の群馬県予選決勝で、前橋育英は前橋商と対戦。前半アディショナルタイム1分、DF瀧口眞大の左CKに、ニアで柴野がヘッドで合わせてゴールネットを揺らした。

 1-0で接戦を制した前年度の選手権王者が、全国行きを決めた。

「去年は夢に見ていたことが実現した。逆に今年は相当なプレッシャーがあるなかで、勝ち抜くのが難しい県予選を突破できたことは素直に嬉しいです」

 試合後、まずは1つの大きな関門を突破したことを素直に喜んだ柴野。決勝弾以外にも、ダブルボランチでコンビを組む竹ノ谷優駕スベディ(モンテディオ山形内定)と共に、中盤での激しいプレスの連続の中で安定したプレーを披露。ゲームの組み立てだけではなく、セカンドボールの回収、ディフェンスラインまで落ちてきて、ボール奪取からの運び出しと、攻守において大きな存在感を放った。

「今日のように球際を好んでくるチームに対して、同じようなプレーで対応したら、相手に軍配が上がってしまうこともあるので、ボランチとしていかに早くボールをプレスから逃してあげられるかをずっと考えていました。

 ボールが来た時に抜け出せるスペースを見つけられるように、いつも以上に首を振って、見つけておいた状態でパスが来たらそこに運ぶというのを意識してやっていました」

 相手の狙い、試合展開を読みながら適したプレーを選択する。5年連続28回目の選手権出場を引き寄せたハイレベルなプレーは、前橋育英の3年間で培ってきた『利己と利他』の融合がもたらしたものだった。
 
「1年生の頃はボールロストもすごく多かった」と口にしたように、ドリブルに夢中になってしまうあまり、パスがおろそかになってしまったり、周りとの連係が噛み合わないプレーをしていた。だが、学年を追うごとに相手が一番怖がるプレーとは何かと考えるようになった。

「積極的にドリブルをされるのも怖いのですが、やっぱり一番嫌な位置に常にいられるのが自分としてはものすごく嫌。そういう選手になるために、常にスペースを探して、攻守において嫌な場所に居続けて、ボールを受けたらどんどん仕掛ける。

 このプレースタイルを目ざすようになって、ボールを持つ前の状況把握や身体の向き、予測などの準備を徹底してやって、今はナチュラルにできるようになりました」

 自分がやるべきプレーがどんどん整理されていくなかで、最高学年になった今年も大きな学びと向上心への刺激があった。インターハイでは2回戦の高知中央高戦では1-0で迎えた後半アディショナルタイムに、まさかの2失点。1-2で敗れた。

「ちょっと『勝てる』と思った瞬間にガタガタと崩れて2点を奪われて、結局その波に飲みこまれての逆転負け。誰も緩んでいるつもりはないけど、どこかで緩みがある選手がいるなら、周りから何を言われようと僕には強く言う必要性しかないと思っています」

 前橋商戦でも事あるごとに「インターハイを思い出せ」と周りに檄を飛ばしてチームを鼓舞。最後の最後まで集中力を切らさない強いメンタリティを示した。
 

次ページ地に足をつけ、その目をギラつかせて

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