マンツーマンのようでマンツーマンでない。カバーシャドウで対応。ガーナ戦で上田、南野、久保のプレッシングは絶妙だった

2025年11月15日 清水英斗

前線3枚で相手4~5枚を消す

ポイントは前線の寄せ方。南野(8番)や上田、久保は効果的なプレスでガーナのビルドアップを妨げた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[国際親善試合]日本 2-0 ガーナ/11月14日/豊田スタジアム

 11月14日に行なわれた国際親善試合のガーナ戦。16分に南野拓実が先制点、60分に堂安律が追加点を挙げる。試合はそのまま2-0で終了し、日本がクリーンシートで勝利を収めた。

 両チームは共に3-4-2-1を敷き、試合はミラーゲームとなったが、戦術の完成度は明らかに日本が上だった。

 まずは日本の守備(ガーナのビルドアップ)を見てみよう。先月のブラジル戦の前半に相手をリスペクトするあまり、自陣に下がりすぎた反省が効いたのか、この試合の日本は積極的だった。敵陣からハイブロックを敷き、相手を追い詰めていく。

 一見すると、相手の3バックに1トップ・2シャドー、相手の1トップ・2シャドーに3バックが噛み合い、各所がマンツーマンのミラーゲームに思える。ただし、細部はそうではなかった。

 日本としては3対3の同数でロングボール対応をすると、世界級のFWに対してはリスクが高いので、DFが晒されないようにプレスをかけたいところ。そこでまず、久保建英は自分とマッチアップする左CBではなく、相手ボランチの1枚を見ながら、左CBに横パスが出た時点で内側を切りながら左CBへプレスをかけ、縦へ蹴るように誘導した。

 最初に相手ボランチを見ていたのは久保なので、ロングパスが蹴られた時点で、佐野海舟は前に引っ張られすぎず、谷口彰悟をヘルプできる位置に留まっている。そしてボールが来た11番のFWセメニョに対し、背面から谷口がプレッシャーをかけ、正面から佐野らが挟んで2対1でボールを奪っていく。
 
 マンツーマンのようでマンツーマンでない、この守備は大いに成功した。セメニョに起点を作られると、日本は全体が下がって対応せざるを得ないが、早期に起点を潰したことで、敵陣でサッカーをすることができた。

 日本のハイプレスに対し、ガーナのようにロングボールで回避してくる相手には、目処が立ったのではないか。相手の形によって要の選手は変わるが、ポイントは前線の寄せ方だ。上田綺世、南野、久保の3人は、相手の3バックに対して背中でボランチらを消しながら寄せていく。カバーシャドウと呼ばれる守備だ。

 そうやって1人が相手2人を消すことで、前線3枚のプレスで相手4~5枚を消している。この前線で稼いだ数的貯金が、セメニョを2対1で潰す利益(今回は主に佐野)を生んでくれるわけだ。

 敵陣ハイプレスを戦術の柱とするなら、この前線の寄せ方はW杯でも日本のスタンダードになるはず。となれば、この守備を実践できる選手でなければ前線のスタメンは厳しい、とも言える。ガーナ戦だけではないが、上田、南野、久保のプレッシングは絶妙だった。

 一方、56分にセメニョがベンチに下がり、サイドにも飛び出す機動的な23番のアドゥに代わると、1トップの攻め筋変更にガーナの逆襲の勢いが加わって、やや苦戦した。それまでのように潰し切れず、自陣で深く守る場面も増えたが、落ち着いて対応し、クリーンシートを保つことができた。
 

次ページ最も大きな勝因はセメニョを潰し切ったこと

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