遠藤&守田の“鉄板コンビ”も安泰ではない。佐野海舟の急成長で一気に序列が変わりそうな森保ジャパンのボランチ陣【日本代表】

2025年11月15日 元川悦子

文句なしのMVPと言っても過言ではない

ガーナ戦で躍動した佐野。攻守両面でエネルギッシュにプレー。南野の先制点もアシストした。写真:梅月智史(サッカーダイジェスト写真部)

「明日はブラジル戦のスタメンを中心に考えていきたいと思っています」

 11月13日のガーナ戦前日会見で、日本代表の森保一監督が宣言した通り、ガーナ戦の先発メンバーは早川友基(鹿島)と田中碧(リーズ)を除く9人が、10月に歴史的初勝利を挙げたブラジル戦(3-2)と同じ顔ぶれだった。

 1つのサプライズだったのはボランチ陣。怪我を抱える鎌田大地(クリスタル・パレス)の欠場が事前に決定。田中の先発が濃厚と目されていた。だが、10月シリーズを欠場し、戻ってきたキャプテンの遠藤航(リバプール)が控えに回ることを想像した人は少なかったに違いない。

「自分が外れてブラジルに勝った危機感? そこはあんまり気にしてないですね。チームとしての力がつけばそれでいいと思っているので」と遠藤はガーナ戦の前日に淡々とコメントしていたが、指揮官は佐野海舟(マインツ)の価値と働きを認めたからこそ、あえてキャプテンをベンチスタートにしたのだろう。

 実際、ガーナ戦での佐野&田中のボランチコンビは、非常に効果的な仕事ぶりを見せていた。

「常にバランスを見ることを意識しましたし、守備の時も攻撃の時もお互いの次のプレーを考えて、良い位置取りができていた。2人ともボールを受けて良い展開ができたシーンもあったんで、まあ良かったと思います」と、佐野も手応えを掴んだ様子だ。

 背番号21はドイツに渡って約1年半だが、アフリカ勢との対戦経験はそこまで多くないはず。しかしながら、序盤から相手に凄まじい寄せと球際のバトルを披露。次々と敵を潰し、ボールを奪い取って、攻めの起点となる縦のパス出しを見せていたのだ。
 
 最たるものが、16分の先制点のシーンだった。相手DFが最前線のアントワーヌ・セメニョ(ボーンマス)に長いボールを出したところに、3バック中央の谷口彰悟(シント=トロイデン)が寄せ、佐野も挟みに行ってマイボールに。そこから堂安律(フランクフルト)、谷口を経由し、久保のパスを受けた佐野が一気に前線へ持ち込み、左から走り込んできた南野拓実(モナコ)にラストパス。南野の先制弾をアシストした。

「(ガーナの)前線にキープできる選手がいるんで、サンドするところだったりというのは意識していましたし、奪ってから前にスペースがあったんで、うまく運べた。(上田)綺世(フェイエノールト)君がすごく良い動き出しをして(DFを)釣ってくれたんで、そこ(南野)にパスを出すことができた。ゴールにつながって良かったです」と本人もしてやったりの表情を浮かべた。

 佐野の場合、頭抜けたデュエルの迫力や対人の強さは誰もが認めるところだが、「縦への意識が足りない」「前選択のパスをうまくつけられない」と厳しい評価を受けることもあった。9月のアメリカ戦では1つのミスから自信を失うメンタル的な脆さも垣間見られた。が、10・11月と短期間で課題を克服。一気に成長速度を引き上げている印象だ。

 堂安の1年5か月ぶりのゴールも加わり、結果的に日本はガーナを2-0で撃破したが、フル出場した佐野の圧巻パフォーマンスは見る者の目を引いた。文句なしのMVPだったと言っても過言ではないだろう。

「別に(自分の)地位が上がったとも思っていないですし、毎回の活動で課題が出るんで、それを自チームに帰って修正するという繰り返しで、どんどん成長していくかなと。これから先もそれは変わらないと思います」と本人は浮かれることはない。ただ、これだけの仕事ができるのなら、もはや「遠藤の代役」という位置づけではない。森保監督も主軸の1人と認めているに違いない。
 

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