「爪痕を残さないといけませんね」日本代表に初招集。ベルギーで奮闘する2人に問いかけた。答えは――【現地発】

2025年11月11日 中田徹

走って、拾って、そのままロングスロー

抜群の決定力でチームの貴重な得点源として活躍する後藤。(C)STVV

 ベルギーリーグは14節を終え、7人の日本人選手が所属するシント=トロインデン(STVV)は4位という好成績を残している。

 直近2試合のアントワープ戦、スタンダール戦はともに1-0の僅差ながら、内容では相手を圧倒。ポゼッションで相手を翻弄し、ボールを失ったら即時回収を図り、すかさずショートカウンターを仕掛けている。

 11月シリーズに臨む日本代表にはDF谷口彰悟に加え、初めてGK小久保玲央ブライアン、FW後藤啓介が選ばれた。チームを率いるワウター・フランケン監督は「今回、3人が日本代表に選ばれたのは喜ばしいこと。うちには他にも伊藤涼太郎、山本理仁という中心選手がいるんですよ」と胸を張った。

 スタンダール戦では今季4点目となる決勝ゴールを決めた後藤に、地元記者が「夏にアンデルレヒトからSTVVに期限付き移籍した時、チームが上位6チーム内にいるなんて想像したか?」と尋ねた。

「いや、自分が(STVVの順位を)上げるつもりで来たので、そのとおりになってホッとしてます」

 点取り屋らしい、後藤の強気な言葉。しかし、この短いコメントの行間には"チームを勝たせるために、俺はすべてを尽くす"というニュアンスが含まれている。

 それを証明する1つが、"前線のストッパー"と呼びたくなるような激しい守備。後半のアディショナルタイムにもやってのける。スタンダール戦では、どういう思いで相手DFのボールを奪いにいったのだろうか。

「前半、自分たちが良いプレーをしていたけど、ゴールを奪えなかったのは攻撃陣の責任です。そのなかで、守備陣がしっかりゼロで抑えてくれた。あの場面では"チームが助かるプレー"を考えて、ファールでもいいと思って行った。

 自分も最終ラインをやっていたことがあるので、ああいうプレーをすると(みんなが)助かるなと思ってやりました。中学1年生から2年生くらいまで、自分はセンターバックで試合に出ていて、年代別代表はディフェンダーとして呼ばれていたんです」
 
 アンデルレヒトのリザーブチーム、RSCAフューチャーズ時代の後藤は、与えられたタスク以外のことも自身で考え、実行していた。ボールが遠くまで飛んでいくと、後藤は走って拾いに行って、そのままロングスローを投げていた。

「フューチャーズは選手が若く、経験が少ない。自分はジュビロ磐田で、Jリーグを大人の中でプレーする経験値があった。お手本にならないといけない年齢でしたし、そういうことを意識してやってました」

 今季の後藤はスタッツ上4ゴールだが、実際には不運としか言いようのないオフサイドの判定でゴールを何度か取消されている。彼がゴールネットを揺らしたシーンを振り返ると、"触れば1点"というところに潜り込むゴールの嗅覚と、チームとして一手詰みの状況を作り出すことが噛み合っている。

「それは間違いないと思う。自分が持ってるもの(=得点感覚)も多少はありますけれど、チームがあそこまで押し込んで、ポケットを取って、崩し切ってるからこそ、最後、こぼれてくるんだろうなと思うので、やっぱりチームのおかげだと思います」
 

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