水戸内定アタッカーの目に涙なし。選手権出場は叶わずも、やるべきことがある。後輩たちにプリンスの舞台を残す「良い形でプロの世界に飛び込みたい」

2025年11月07日 安藤隆人

全国でその破壊力を見せつけたかった

愛知のスピードスター、山下。切れ味抜群のドリブル突破が魅力だ。写真:安藤隆人

 愛知のスピードスターの高校最後の選手権は、予選準決勝で幕を閉じた。来季の水戸ホーリーホック加入が内定している名古屋高MF山下翔大は、準決勝で東海学園高に0-1で敗れて2年ぶりの選手権出場を逃した。

「2年前(第102回大会で初出場しベスト8入り)に先輩たちに選手権という舞台を見せてもらって意識が大きく変わったので、僕らも後輩たちにその景色を見せてあげたかった。それに僕らの代は3年間ずっと切磋琢磨をやってきて、本当に仲良い学年だったので、どうしても全国に行きたかったんですけど叶わなかった。本当に悔しいです」

 この試合で山下はベンチスタートで、30分に投入されると、最初は右サイドハーフのポジションでずば抜けたスピードと切れ味抜群のドリブル突破を見せ、途中で左サイドハーフに移ると、さらに突破力を見せつける。

 35分には左サイドをドリブルで切り裂きクロスでチャンスを作ると、45分にはスローインを受けて鋭くターンして一気に突破。53分には右サイドでボールを受けると、DF2枚を食いつかせてから一気に2人の間を打ち抜いてペナルティエリア内まで進入。マイナスのクロスから味方のシュートを引き出すが、いずれも東海学園の身体を張ったディフェンスに阻まれた。

 何度も驚異的な加速力とアジリティを駆使した突破でスタジアムを沸かすが、ゴールが遠く、彼が投入された直後に失点し、これが決勝点となった。
 
「腰を痛めて1か月半くらいの離脱だったのですが、まずは再発しないようにその周りの筋肉を鍛えました。そこから股関節の可動域や柔軟性などを意識して鍛えました。内定が決まってからは、どの相手も縦を完全に切ってくるんです。それに対して苦労した部分があったので、復帰したら縦を切られても打ち抜けるような突破ができるイメージを持ってフィジカルトレーニングに挑みました」

 復帰は今大会初戦から。ベストコンディションではないために、東海学園戦でもベンチスタートとなった。それでもコアの筋力や踏み込み、蹴り出しなどパワーが増したことで、山下が思い描いていたように縦への突破の破壊力は格段に増した。それだけに全国でその破壊力を見せつけたかった。

「悔しいですが、出られない仲間もいるなかで、(ベンチ入り)メンバー20人に選ばれてピッチに立つことは、140人の名古屋高サッカー部全員の代表でもあるので、誇りを持ちたいし、最後まで胸を張っていきたいと思います」

 毅然とした態度を見せる山下の目には涙がなかった。その理由は『ここでは』最後まで仲間の顔を見て、チームの代表としてピッチに凛と立っていた姿のままで終わりたいという、誇り高き気概だった。

「正直、(涙が)出そうにはなったのですが、みんなには見せたくないんです。みんなの前では絶対に泣かないと決めているので、1人になったら泣こうと思います」

 山下にはまだやらなければいけないことがある。それは愛知県1部リーグの残り3試合で勝点を積み重ねて、優勝と、昨年に涙をのんだプリンスリーグ東海参入戦で勝利し、後輩たちにプリンスの舞台を残してからプロに行くことだ。

「もっともっと成長しないといけないと思っています。まずは怪我をする前のコンディションに完全に戻すことと、ホーリーホックから課題としていただいているオフ・ザ・ボールの動きや、パス&コントロールの技術は意識的に磨いて、良い形でプロの世界に飛び込みたいと思います」

 決意を新たに。愛知のスピードスターはチームのために、己のためにその唯一無二の牙を磨き続ける。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)

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