第1戦は3-1で先勝していただけに...
柏に敗れ肩を落とす川崎の選手たち。サポーターからは拍手が送られた。(C)SOCCER DIGEST
[ルヴァンカップ・準決勝・第2戦]柏 4-1 川崎(トータルスコア:柏 5-4 川崎)/10月12日/三協フロンテア柏スタジアム
川崎にとっては痛恨の敗戦となった。
柏とのルヴァンカップの準決勝。ホームでの第1戦は3-1で先勝し、アウェーでの第2戦も、前に出るしかなかった柏に対して開始4分に脇坂泰斗が大きな先制点をマーク。川崎の決勝進出の可能性が非常に高まったかのように見えた試合の立ち上がりであった。
もっとも決勝進出へより前に出るしかなくなった柏の、今季リカルド・ロドリゲス監督の下で磨いてきた3-4-2-1の立ち位置やパスワークを活かした攻撃を前半から受けると、ボディブローのようにダメージを与えられた川崎は、1-1で折り返した後半に決壊することになる。
何より大きかったのは56分のフィリップ・ウレモヴィッチの一発退場だ。今夏に加わった武闘派CBは、熱く力強い守備が特長も、ファウルトラブルが難で、デビュー戦となった8月の福岡戦(25節)に続く退場で川崎は数的不利な状況を強いられた。
もっとも前半から苦しくなりそうな予感は漂っていた。
柏とは9月28日のリーグ戦(△4-4)でも戦っていた川崎は、その試合は特に前半に柏にこれでもかとボールを回され、前線の個のタレントで対抗して点の取り合いを演じたが、組織だったディフェンスを大事にする長谷部茂利監督を筆頭に川崎の面々が指摘したのは4失点した守備面だった。
4日前の準決勝・第1戦では「(3-4-2-1の柏の)2シャドーを(4-2-3-1の川崎の)ダブルボランチがマンマーク気味に抑えてきた」と柏のリカルド・ロドリゲス監督が語ったように川崎は対策を練り、"良い守備からの良い攻撃"で先勝したが、後半は相手の攻撃を受ける苦しい時間も過ごしていた。
そして今回の準決勝・第2戦も、4-2-3-1で臨んだ川崎は、3-4-2-1の柏が形を少し変化させ、ボランチが縦関係となり、川崎のボランチから離れる動きで起点になられたシャドーの一角、小泉佳穂のポジショニングにも惑わされ、前半から難しい対応を強いられた。
しかも後半開始から攻撃のギアをさらに上げるために柏はFW細谷真大、コンディション面で「90分は持たなかった」(リカルド・ロドリゲス監督)というキャプテンのCB古賀太陽、後方から変化を加える原田亘を投入してくる状況。
「FWとボランチが後ろに吸収されてしまったので、もうちょと押し出してあげないと、ああやって押し込まれてしまうので、そこは自分の声でやれたところだと思うので、悔しいです。
押し込まれる展開になるのは仕方ないというか、相手も点を取らないと(決勝に)上がれない状況だったので、『焦れずにやっていこう』と後半に入る時に円陣などで話していましたが、ひとり少なくなってしまい、自分たちで難しくしてしまった」
川崎のCB佐々木旭の言葉通り、より押し込まれた川崎は重心が下がり、押し返すのが難しくなり、後半頭から出場したFW細谷に裏に抜け出されそうになったところを、身体を投げ出して止めたウレモヴィッチがVAR判定の末に一発退場になったのも自然な流れと言えたのかもしれない。
川崎にとっては痛恨の敗戦となった。
柏とのルヴァンカップの準決勝。ホームでの第1戦は3-1で先勝し、アウェーでの第2戦も、前に出るしかなかった柏に対して開始4分に脇坂泰斗が大きな先制点をマーク。川崎の決勝進出の可能性が非常に高まったかのように見えた試合の立ち上がりであった。
もっとも決勝進出へより前に出るしかなくなった柏の、今季リカルド・ロドリゲス監督の下で磨いてきた3-4-2-1の立ち位置やパスワークを活かした攻撃を前半から受けると、ボディブローのようにダメージを与えられた川崎は、1-1で折り返した後半に決壊することになる。
何より大きかったのは56分のフィリップ・ウレモヴィッチの一発退場だ。今夏に加わった武闘派CBは、熱く力強い守備が特長も、ファウルトラブルが難で、デビュー戦となった8月の福岡戦(25節)に続く退場で川崎は数的不利な状況を強いられた。
もっとも前半から苦しくなりそうな予感は漂っていた。
柏とは9月28日のリーグ戦(△4-4)でも戦っていた川崎は、その試合は特に前半に柏にこれでもかとボールを回され、前線の個のタレントで対抗して点の取り合いを演じたが、組織だったディフェンスを大事にする長谷部茂利監督を筆頭に川崎の面々が指摘したのは4失点した守備面だった。
4日前の準決勝・第1戦では「(3-4-2-1の柏の)2シャドーを(4-2-3-1の川崎の)ダブルボランチがマンマーク気味に抑えてきた」と柏のリカルド・ロドリゲス監督が語ったように川崎は対策を練り、"良い守備からの良い攻撃"で先勝したが、後半は相手の攻撃を受ける苦しい時間も過ごしていた。
そして今回の準決勝・第2戦も、4-2-3-1で臨んだ川崎は、3-4-2-1の柏が形を少し変化させ、ボランチが縦関係となり、川崎のボランチから離れる動きで起点になられたシャドーの一角、小泉佳穂のポジショニングにも惑わされ、前半から難しい対応を強いられた。
しかも後半開始から攻撃のギアをさらに上げるために柏はFW細谷真大、コンディション面で「90分は持たなかった」(リカルド・ロドリゲス監督)というキャプテンのCB古賀太陽、後方から変化を加える原田亘を投入してくる状況。
「FWとボランチが後ろに吸収されてしまったので、もうちょと押し出してあげないと、ああやって押し込まれてしまうので、そこは自分の声でやれたところだと思うので、悔しいです。
押し込まれる展開になるのは仕方ないというか、相手も点を取らないと(決勝に)上がれない状況だったので、『焦れずにやっていこう』と後半に入る時に円陣などで話していましたが、ひとり少なくなってしまい、自分たちで難しくしてしまった」
川崎のCB佐々木旭の言葉通り、より押し込まれた川崎は重心が下がり、押し返すのが難しくなり、後半頭から出場したFW細谷に裏に抜け出されそうになったところを、身体を投げ出して止めたウレモヴィッチがVAR判定の末に一発退場になったのも自然な流れと言えたのかもしれない。
結果論になってしまうが、両指揮官の交代策も対照的だった。
56分、10人での戦いを余儀なくされた川崎の長谷部監督は、攻撃のキーマンである伊藤達哉、マルシーニョを潔く下げ、大卒ルーキーの神橋良汰、昇格1年目の土屋櫂大というふたりのCBを投入し、布陣を5-3-1にシフト。
「守り抜こうではなくて、彼らの長所を消すために自分たちが立ち位置を少し変えました。ひとり少なく、どれだけ自分たちがボールにプレッシャーをかけたとしても、そこから剝がされてしまう可能性が高いので、それ(5バック)でボールを奪う、また攻撃のところで1トップに対して自分たちが後ろから追い越していくプレーをしたかったですが、非常に厳しかったです。決して守り一辺倒にならないように、という気持ちはありました」
そう長谷部監督は振り返ったが、74分には攻撃に彩りを加えていたボランチの山本悠樹に代えて強度を高められる橘田健人も投入。ひとり少なかっただけに仕方ないが、守る川崎と、攻める柏という構図はより色濃くなっていく。
一方、かさにかかって攻める柏は、疲労などを考慮して切り札として控えさせていた仲間隼斗らさらに攻撃のカードを切っていく。結果的にリカルド・ロドリゲス監督の采配はズバリ当たった。
73分に仲間、77分に細谷に決められてトータルスコアで同点に追いつかれた川崎は、キーマンたちを下げていた影響で攻撃の形を作れなくなり、後半アディショナルタイムに再び細谷に決められて力尽きた。
川崎にとっては苦しい台所事情も影響したと言える。春にサウジアラビアで開催されたACLエリートでは決勝で敗れ、その後の過密日程で川崎に疲労はたまっていた。
柏との準決勝・第1戦ではフル稼働していた左SB三浦颯太が怪我に倒れ、復帰戦となった10番のMF大島僚太も再び負傷。さらにCB陣はベテランの丸山祐市が長期離脱中(右膝内側半月板損傷)で、ジェジエウ、車屋紳太郎も不在。夏には高井幸大がFW山田新とともに海外挑戦を決め、その穴をカバーするためにキーマンたちへの負荷は高まっていた。CB佐々木も今回の柏戦の終盤は足を引きずるような姿も見せていた。
そのなかで課題も修正できなかった。佐々木は柏との準決勝・第1戦を3-1で終えたあと、警鐘を鳴らしていた。
「結果的には良いスコアで終われましたが、内容はずっと押し込まれていましたし、後半は自分たちのやりたいことはできていなかったので、(準決勝・第2戦では)相手のホームは良い雰囲気ですし、このままだと圧倒されてしまうと思う。自分たちのやるこべきこと、やりたいことを改めて整理して2戦目に挑む必要があるのかなと思います。
耐える時をしっかり耐えられるようにしながら、自分たちがしっかりボール握る技術だったり、判断を高めないといけないと感じます。もう少し一人ひとりが勇気を持って、ボールを欲しがるところなどは強い気持ちを持ってやっていきたいです」
ただ、ショッキングな第2戦の敗戦後、改めて佐々木は悔しそうに語った。
「(リーグを含めて直近で柏と)3試合やって、同じような展開というか後半押し込まれてしまうところで、何も自分たちで修正できなかったなと。もったいなかったなと感じます。
自分たちがもっとボールを握るとか一人ひとりがボールを欲しがるとか、勇気を持って運ぶとか、そういうことをやっていかないと、ずっと相手ボールで守備をしていて、そういう状況では少し難しいゲームになってしまいます。自分たちの良さを出していかないといけないなと感じました」
自分たちの良さ――。今季は長谷部監督の下で守備面の強化に力を入れてきたチームは、組織的に手堅く守りつつ、大ブレイク中の伊藤達哉や、マルシーニョ、エリソンら前線のタレント、ボランチの山本悠樹のひらめきなど、"個"の力で状況を打開し、リーグトップの得点数(60)を誇るが、リーグで7番目に多い失点(45)も喫している。
そのなかで昨季まで積み重ねてきた技術力を何よりも大切にし、相手を見て逆を取るパスサッカーの色は薄まっている。
多くのタレントが海を渡るようになった昨今、戦力維持、サッカーのクオリティの維持はかなり難しくなっている。もっとも現状を憂いても何も始まらない。大事なのは川崎がクラブとして、今後、どう指針を示していくかだ。
鬼木達前監督体制の最終シーズンとなった昨季に続き、無冠の可能性がかなり高まった現状で、川崎は自らの方向性を改めて考える時に来ているのだろう。どういったサッカーを目指すのか、大切な岐路だと感じる。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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56分、10人での戦いを余儀なくされた川崎の長谷部監督は、攻撃のキーマンである伊藤達哉、マルシーニョを潔く下げ、大卒ルーキーの神橋良汰、昇格1年目の土屋櫂大というふたりのCBを投入し、布陣を5-3-1にシフト。
「守り抜こうではなくて、彼らの長所を消すために自分たちが立ち位置を少し変えました。ひとり少なく、どれだけ自分たちがボールにプレッシャーをかけたとしても、そこから剝がされてしまう可能性が高いので、それ(5バック)でボールを奪う、また攻撃のところで1トップに対して自分たちが後ろから追い越していくプレーをしたかったですが、非常に厳しかったです。決して守り一辺倒にならないように、という気持ちはありました」
そう長谷部監督は振り返ったが、74分には攻撃に彩りを加えていたボランチの山本悠樹に代えて強度を高められる橘田健人も投入。ひとり少なかっただけに仕方ないが、守る川崎と、攻める柏という構図はより色濃くなっていく。
一方、かさにかかって攻める柏は、疲労などを考慮して切り札として控えさせていた仲間隼斗らさらに攻撃のカードを切っていく。結果的にリカルド・ロドリゲス監督の采配はズバリ当たった。
73分に仲間、77分に細谷に決められてトータルスコアで同点に追いつかれた川崎は、キーマンたちを下げていた影響で攻撃の形を作れなくなり、後半アディショナルタイムに再び細谷に決められて力尽きた。
川崎にとっては苦しい台所事情も影響したと言える。春にサウジアラビアで開催されたACLエリートでは決勝で敗れ、その後の過密日程で川崎に疲労はたまっていた。
柏との準決勝・第1戦ではフル稼働していた左SB三浦颯太が怪我に倒れ、復帰戦となった10番のMF大島僚太も再び負傷。さらにCB陣はベテランの丸山祐市が長期離脱中(右膝内側半月板損傷)で、ジェジエウ、車屋紳太郎も不在。夏には高井幸大がFW山田新とともに海外挑戦を決め、その穴をカバーするためにキーマンたちへの負荷は高まっていた。CB佐々木も今回の柏戦の終盤は足を引きずるような姿も見せていた。
そのなかで課題も修正できなかった。佐々木は柏との準決勝・第1戦を3-1で終えたあと、警鐘を鳴らしていた。
「結果的には良いスコアで終われましたが、内容はずっと押し込まれていましたし、後半は自分たちのやりたいことはできていなかったので、(準決勝・第2戦では)相手のホームは良い雰囲気ですし、このままだと圧倒されてしまうと思う。自分たちのやるこべきこと、やりたいことを改めて整理して2戦目に挑む必要があるのかなと思います。
耐える時をしっかり耐えられるようにしながら、自分たちがしっかりボール握る技術だったり、判断を高めないといけないと感じます。もう少し一人ひとりが勇気を持って、ボールを欲しがるところなどは強い気持ちを持ってやっていきたいです」
ただ、ショッキングな第2戦の敗戦後、改めて佐々木は悔しそうに語った。
「(リーグを含めて直近で柏と)3試合やって、同じような展開というか後半押し込まれてしまうところで、何も自分たちで修正できなかったなと。もったいなかったなと感じます。
自分たちがもっとボールを握るとか一人ひとりがボールを欲しがるとか、勇気を持って運ぶとか、そういうことをやっていかないと、ずっと相手ボールで守備をしていて、そういう状況では少し難しいゲームになってしまいます。自分たちの良さを出していかないといけないなと感じました」
自分たちの良さ――。今季は長谷部監督の下で守備面の強化に力を入れてきたチームは、組織的に手堅く守りつつ、大ブレイク中の伊藤達哉や、マルシーニョ、エリソンら前線のタレント、ボランチの山本悠樹のひらめきなど、"個"の力で状況を打開し、リーグトップの得点数(60)を誇るが、リーグで7番目に多い失点(45)も喫している。
そのなかで昨季まで積み重ねてきた技術力を何よりも大切にし、相手を見て逆を取るパスサッカーの色は薄まっている。
多くのタレントが海を渡るようになった昨今、戦力維持、サッカーのクオリティの維持はかなり難しくなっている。もっとも現状を憂いても何も始まらない。大事なのは川崎がクラブとして、今後、どう指針を示していくかだ。
鬼木達前監督体制の最終シーズンとなった昨季に続き、無冠の可能性がかなり高まった現状で、川崎は自らの方向性を改めて考える時に来ているのだろう。どういったサッカーを目指すのか、大切な岐路だと感じる。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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