森保ジャパンは南米の壁に苦闘、パラグアイ戦で起きた“課題の連鎖”。守備面に懸案事項、3CBの限界が明らかに【戦術分析】

2025年10月11日 清水英斗

強化試合としては理想的な内容に

森保ジャパンは上田の土壇場の同点弾で、パラグアイ相手にドローに持ち込んだ。写真:永島裕基

 日本代表は10月10日、国際親善試合でパラグアイと対戦。常にリードを許す苦しい展開ながらも、26分に小川航基、90+4分に上田綺世と、ふたりの主力ストライカーがそれぞれ同点ゴールを挙げ、2-2で引き分けた。

 ワールドカップ南米予選のホームでブラジル、アルゼンチン、ウルグアイに勝った実績は伊達じゃない。パラグアイは優れたチームで、試合の雰囲気はテストマッチを少し越えた緊張感もあった。日本は試合を進めるうちに課題が露出し、対策を試みて、その対策にも課題が出てと、強化試合としては理想的な内容だった。

 内容に目を移すと、システムは日本が3-4-2-1を継続し、パラグアイは4-2-3-1を敷いた。序盤から見られた日本の狙いは、可変ビルドアップだ。田中碧と佐野海舟のいずれか1枚を落とし、3バックの3枚回しに+1枚で、4枚回しに変形した。

 仮に3枚回しのままで行くと、パラグアイの1トップ+両ウイングに同数で追い込まれ、バックパスをGKが蹴って攻撃終了となる恐れがある。だから、そうならないように、4枚でボールを落ち着かせる。

 一方で4枚回しに変えたとしても、パラグアイがプレッシングにトップ下を加勢させた場合、結局4対4でハマる恐れがある。そこで日本は、4枚回しの幅を少し狭めた。左CBの鈴木淳之介はタッチラインまで開かず、左のハーフスペースに立ち、左の大外レーンを空けておく。そこへ左シャドーの南野拓実が下りてパスを受け、5対4の優位を作って、安全にパラグアイの第一プレッシングラインを越えた。

 ところが、このビルドアップは後ろに選手を複数下ろすため、南野がボールを持った時点で中がかなり薄い。強引にクサビを入れても、パラグアイに刈り取られてしまう。そこで日本は第一ラインを越えた段階で、一旦止まり、サイドを変えた。4バックでコンパクトに閉じたパラグアイを左右に揺さぶって消耗させつつ、スペースを空けて逆サイドから仕掛ける。

 前半の4分には、まさにその狙いが感じ取れた。左から右へサイドを変えて、パラグアイのスライドが追いつかないうちに、渡辺剛が伊東純也へミドルパスを通してクロスへ。こうしたサイドチェンジからの逆サイド攻めが、前半から機能していた。
 
 特に堂安律と伊東の阿吽のコンビネーションは印象的だ。堂安はハーフスペースのライン間に立ち、相手ボランチとサイドバックに睨みを利かせる。初っ端の渡辺のパスが効いたのか、相手サイドバックが伊東へ早めに寄せるようになると、空いたスペースへ堂安が斜めに飛び出す。堂安は相手ボランチに追われるが、中を見ずに一瞬早くクロスを入れるか、あるいは緩急の駆け引きを入れてドリブルで剥がすなど、巧妙に仕掛けた。

 堂安に来たら伊東が、伊東に来たら堂安がと、相手の対応を見ながらの2人の駆け引きはパフォーマンスが良く、それに反応して空いたスペースを小川航基がポストプレーに使ったりと、全体的に右サイドの攻撃はスムーズに流れた。

 ただし、やはりこのレベルの相手になると、外からサイドを破ってクロスを入れても、簡単には決定機にならない。さらに日本はビルドアップに人数をかけているため、クロスを上げても中が間に合わないケースがある。ビッグチャンスを量産とはいかない。

 とはいえ、このやり方はリスクが少ないのでボール保持が安定しやすく、たとえ一発で決まらなくても、CKなどのセットプレーが増えるのはメリット。そこで日本がチャンスを迎える場面もあった。

 あまり攻撃にリスクをかけず、抜群のクロスが抜群のシューターと出会うのを待つか、あるいはセットプレーでこう着を破る。少なくとも同点の間なら、こうしたバランスを重視したゲームコントロールで、粘り強く1点の機会をうかがう戦い方は妥当だろう。

 その後、パラグアイに疲れが見え、日本の時間帯になった時は、田中がライン間へ潜って攻撃に人数をかけるなど、ギアを上げていった。

 攻撃は概ね良かったのではないか。右サイドに比べると、左サイドは連係が未熟であるため、序盤は中村敬斗の単独突破と、単発の飛び出しくらいしか見どころがなかったが、前半の中ごろから後半にかけては、鈴木が高い位置で絡む回数が増え、左サイドも活性化した。ポジティブな内容だったと思う。
 

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