快進撃のJ2長崎で図抜けた存在感。攻守で躍動する山口蛍は結果にフォーカス「やることがハッキリしたのが大きい」

2025年10月05日 元川悦子

チームの完成度は確実に高まっていると言っていい

攻守の両局面でフル稼働の山口。敵将は「2~3人分くらいの働きをしている」とリスペクト。写真:梅月智史(サッカーダイジェスト写真部)

"魔境"とも言われる2025年のJ2もいよいよ佳境。10月4日には2位のV・ファーレン長崎と3位のジェフユナイテッド千葉の直接対決がフクダ電子アリーナで行なわれ、27本ものシュートを浴びながらもしっかりと耐えた長崎が、エジガル・ジュニオと松本天夢のゴールで2-0の勝利を飾った。

 長崎は勝点を59に伸ばし、暫定首位に浮上。今季初めてリーグのトップに立つと同時に、2018年以来のJ1復帰に大きな弾みをつけることに成功した。

 6月15日のRB大宮アルディージャ戦から14戦無敗。下平隆宏前監督から高木琢也監督が後を引き継いでからの13試合は、9勝4分けと凄まじい勢いでポイントを積み重ねている。3バックへの変更、マテウス・ジェズスとE・ジュニオの得点力アップ、ディエゴ・ピトゥカの加入など様々な要因が重なり、チームの完成度は確実に高まっていると言っていい。

「今回の試合も序盤から相手に攻め込まれましたけど、グラウンドの中ではそんなにバタバタしていなかった。相手のホームなので、立ち上がりからああやってくることを意識していたなかで、想定通り、けっこう前から来たんで、うまく対応できた感じです。

(監督が)高木さんになってからやることがハッキリしたのが大きい。もちろん選手たちも監督から信頼されていることを感じられてると思うんで、そこが一人ひとりの自信につながっているんじゃないかなと思います」

 こう語るのは、キャプテンの山口蛍だ。昨季までヴィッセル神戸で腕章を巻き、J1連覇に貢献した34歳のベテランは今季、J2から再出発するという決断を下したことは、多くの人々を驚かせたが、この10か月間は彼自身、必ずしも順風満帆ではなかったはずだ。
 
 今季の長崎は開幕当初こそ3~7位で推移していたが、山口が3月23日のブラウブリッツ秋田戦で負傷すると、チーム状態が一気に下降。山口が欠場した6試合は2分け4敗と信じがたい不振に陥ったのである。

「蛍君は経験値も高く、落ち着きもある選手。だからこそ、周りも落ち着ける。彼がいなかった4月はなかなかそういう形にならなかった。『蛍君がいないとできない』というのは良くないですけど、本当に欠かすことのできない重要な選手だと思います」と、最終ラインを統率する新井一耀も神妙な面持ちで話した。怪我で苦しむなか、山口本人は「より昇格に向けて現実的にならなければいけない」という割り切りを強めていたようだ。

「チームが勝ってない時は、自分が怪我で出られなかった時期。ハーフタイムとかに声かけをしたりもしていましたけど、自分が復帰することで変わる部分がたくさんあると思っていました。実際、ピッチに戻ってからは流れも良くなりましたね。

 その頃の自分が考えていたのは、追い求める理想と昇格しなきゃいけないという結果のどっちを追い求めるのかということ。そこで『やっぱり結果にフォーカスしないといけない』という自覚が、僕を含めてみんなの中で強まっていった。高木さんが監督になってからは徐々にそういう方向に進んで、うまくいっているのかなと感じます」
 

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