スペイン、ブラジルを撃破。“死の組”で完全に主役。モロッコの躍進には目を見張るものがある【U-20W杯戦記】

2025年10月04日 浅田真樹

歓喜の宴はしばしの間、繰り広げられた

強豪国を連破し首位通過を決めたモロッコ。(C)Getty Images

 現在チリで行なわれているU-20ワールドカップのグループステージにおいて、最も大きな注目を集めていたのは、グループCで間違いないだろう。

 それぞれの大陸予選を兼ねた大会で、ヨーロッパと南米を制したスペインとブラジルが同組となったばかりか、北中米を制したメキシコ、そしてアフリカを代表する強国のモロッコまでもが同じ組に入ったからだ。

 どんな大会でも、ときに「死の組」と称されるグループが生まれるものだ。しかし、その場合でも、全4か国のうち3か国くらいが強国で、1か国くらいは比較的レベルが落ちるチームが入っているもの。これほど粒ぞろいの厳しいグループも珍しい。グループの組み合わせさえ違っていれば、この4か国がベスト4を占めても不思議はないほどの顔ぶれである。

 とはいえ、グループCが死の組と称された最大の理由は、スペインとブラジルの同居だろう。

 ともに、過去にこの大会でも優勝経験があり(ブラジルは5回、スペインは1回)、育成年代の実績は豊富。日本も出場した2003年大会では、両国が決勝で顔を合わせている。結果はブラジルが1-0で勝利し、通算4回目の優勝を果たしたが、小さな身体でスペインの攻撃を操っていた、当時19歳のアンドレス・イニエスタの活躍は、強烈な印象を残した。

 そんな育成年代における2大強国が同じグループに入ったのだから、注目を集めないはずがない。死の組とはいえ、グループCの争いは当然、この2か国を中心に進んでいくと思われた。

 ところが、である。

 各国が2試合ずつを消化した時点で、グループCの主役の座を務めているのは、間違いなくモロッコだ。
 
 モロッコは最初のスペイン戦を2-0で勝利すると、続くブラジル戦も2-1で競り勝って、連勝。2強を立て続けに破る快進撃を見せているのである。

 スペインに続き、ブラジルをも下した試合の後では、モロッコの選手、スタッフがピッチ上で大騒ぎ。センターサークルで輪になってグルグルと回ったり、スタンドのサポーターをバックに記念撮影を行なったりと、歓喜の宴はしばしの間、繰り広げられた。

 勝点6を積み上げたモロッコは最終戦を残して、あっさりとグループ1位通過を決めてしまったのである。

 それにしても、このところのモロッコの躍進には目を見張るものがある。

 2022年ワールドカップでのアフリカ勢初のベスト4進出は言うまでもないが、昨年のパリオリンピックでも銅メダルを獲得。オリンピックでは準決勝でスペインに敗れ、決勝進出を絶たれていただけに、弟分のU-20世代がリベンジを果たした格好だ。

 U-20モロッコ代表を率いるモハメド・ウアビ監督は、「カタール・ワールドカップのチームが私たちに教えてくれたこと」として、「信じること、謙虚さを貫くこと、努力すれば、必ずそこ(目標)にたどり着けること」を挙げ、「それを踏まえて、選手たちに何をするべきかを伝えている」という。

 3年前のワールドカップで偉業を成し遂げたことでの自信と誇りは、確かに下の世代にも引き継がれているのである。

取材・文●浅田真樹(スポーツライター)

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