「やっぱり数字が欲しいですよ」ベルギー3年目の日本人MFが噛み締める“進化と成長の跡”。「ひとつ自信になっている」「ボックス・トゥ・ボックスが目標」【現地発】

2025年10月01日 中田徹

STVVはリンブルフ・ダービーで1-2の惜敗

充実の表情を浮かべる山本(右)。いまやすっかりSTVVの中盤に欠かせない中軸だ。(C)STVV

 試合から2日経っても、ベルギーメディアやSNSのコメントを通じてリンブルフ・ダービーの余韻が伝わってくる。9月28日、アウェーのヘンクが2-1の僅差でシント・トロイデン(STVV)を下した白熱の戦いは、レフェリーの判定に疑わしいところがあったことから、レフェリー委員会の見解に注目が集まった。

1)後藤啓介のゴールが取り消されたシーンでは、そもそもVARの介入は必要なく、ゴールは認められるべきだった。
2)ファン・ヘルデンの退場は、判定として正しいものだった。

 後藤のゴールが決まっていれば、前半のうちにSTVVが2-0とリードを広げていただけに、チームにとっても本人にとっても残念な判定だった。

 また、ヘンクサポーターが爆竹のようなものをピッチに投げ込み、試合が中断したことから、シント・トロイデン市長の怒りを買い「次のダービーは、アウェーのサポーターの来場を断るかもしれない」とコメントしている。過去のダービーでも多くの禍根を遺してきた両チームのクラッシュだけに、ヘンクのホームで行なわれるリンブルフ・ダービー(第29節)も大きな注目を集めることになりそうだ。

 話は試合当日に戻る。場内の時計表示が101分3秒を指したところで試合終了の笛が鳴ると、STVVの選手たちはしばしピッチに倒れ込んだ。55分に退場者を出してから、10人で戦い続けたSTVVの選手たちにとって、フィジカルはもちろんのこと、メンタルにも非常に堪える惜敗だった。

 試合後、センターサークル付近で円陣を組み、選手たちに熱く語りかけるワウター・フランケン監督の訓話はかなり長かった。DF谷口彰悟やMF山本理仁の話を合わせると、その内容は次の通り。

「このチームを誇りに思う。俺たちの姿勢、デュエル、前半やっていたフットボール――そのすべてが誇りだ。10人になるまでSTVVがヘンクを上回っていた。決して悲観することなく次に向かおう。ただ、勝ち切りたかった」

 3連敗を喫したのはいただけない。それでも俯く必要はない。堂々と顔を上げてサポーターに挨拶し、ロッカールームに引き上げていけばいい――。そんな勇敢なSTVVの戦いぶりだった。

 試合終了直後、山本の第一声は「めっちゃ疲れました」というものだった。立ち上がりからピッチの前後左右を幅広く走り回り、攻守に絡み続けたうえ、退場者が出てから山本のタスクはさらに増えた。
 
――ダービーをやってみて。

「雰囲気も最高でしたし、ホームだったので勝ちたかった。悔しかったです」

――今までで最高の入りだったのでは?

「そうですね。順位(4位→6位)もあると思いますし」

――期待感を感じつつ。

「はい。今年はより期待感を感じます」

 インタビューの立ち上がりは一問一答。そこに疲労の濃さと悔しさが滲んでいた。しかし、ここら辺りで"心のクーリングダウン"が終わり、話は多岐に渡っていった。

「(退場者が出て)あそこで全員、厳しくなったと思いますけれど、決めるところで決めていれば...。僕自身、ふたつチャンスがありました。前半のうちに3点取れていれば、退場者が出ても焦ることなく試合を進めることができた。そこも反省です」

 特に40分、後藤のプレッシングに慌てたGKのミスキックを拾った山本が、1対1になったシーンは決めておきたかったが、詰めてきたキーパーにシュートを当ててしまった。とはいえ、リンクマンとして、ボックス・トゥ・ボックス型のMFとして、山本の調子の良さも光ったゲームだった。

「でも、やっぱり数字が欲しいですよ。数字が欲しいときだからこそ、そこにこだわってやっていきたい。ただ守備ができるようになったのが、ひとつ自信になっている。そこは継続してやっていきたい」

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