鹿島ユースで伝統の「40番」を背負う男は、まだまだ伸びる。ド派手な活躍で注目度が増すなか、コツコツと磨き続ける強い意志と学ぶ意欲があるから

2025年09月18日 安藤隆人

得点を量産できる理由が詰まったチーム3点目

世代屈指のストライカーとして注目を集める鹿島ユースの吉田。写真:安藤隆人

 2024年のクラブユース選手権とプレミアリーグEASTで得点王。今年は2年連続でクラブユース選手権の得点王に輝き、J1でもデビュー済み。

 まだ高校2年生とは思えない、そもそもFWを始めたのが高校からとは思えない爆発ぶりを見せているのが、鹿島アントラーズユースの絶対的エースストライカー、吉田湊海だ。9月15日に行なわれたプレミアEAST第13節の前橋育英との上位決戦でも、1ゴール・1アシストと大暴れをし、チームの首位キープに大きく貢献した。

「今年はシュートをバンバン決めている感じではないので、まだ納得はしていません」

 3-1で快勝した後だが、反省の色は強い。それだけ吉田は常にゴールに飢えている。今季にここまで彼が挙げたゴールは7つで、得点ランキングでは5位タイにつける。U-17アジアカップ出場などで3試合を欠場していることを考えると非常に良い数字だが、やはりそれでも満足などしない。

 FC多摩ジュニアユースから鹿島ユースにやってきた吉田は、中学までボランチを主戦場としていたが、その爆発的なアジリティ、前への推進力とゴールへの貪欲さを買われ、FWへコンバート。そこで持っていた能力がさらに開花していった。

「ストライカーとして大事にしているのは、『ここぞ』という時に力を発揮すること。中学までボランチをやっていたので、周りと繋がるプレーは土台としてありますし、3人目の動きで(シュートエリアまで)入っていってボールをもらう動きや、相手の逆を突く動きもイメージとして持っていました。フォワードでそのイメージを活かしながら、柳沢(敦/昨年までユース監督、今季はトップチームコーチ)さんからストライカーとしての動きや大切なことを学べたのが大きかったです」

 こう口にしたように、日本代表として日韓大会、ドイツ大会と二度のW杯に出場し、クラブのレジェンドでもある柳沢コーチからのアドバイスは、吉田のプレーに大きな影響を与えている。
 
 話を前橋育英戦に戻すと、チームの3点目となったゴールは、吉田が得点を量産できる理由が詰まったものだった。

 後半アディショナルタイム2分、味方のロングボールをクリアしようとする相手DFに対して、吉田は猛然とプレスをかける。クリアが弱くなったこぼれを、自身の後ろでMF平島大悟が拾ったのを見た瞬間、ゴールに背を向けていた吉田はすぐに横にスライドし、平島が仕掛けても自分がボールを受けてもいいポジションに動いた。

「大悟がこぼれを拾う直前に一瞬、首を振ったら、僕の左側にスペースがあったので、そこを狙いながら、大悟がシュートを打ったら自分がこぼれを詰められるように準備しました」

 ワントラップした平島はその動きを見逃さず、すぐにパスを供給。そのボールに対して吉田はクロスステップを入れて素早く身体をゴールに向けてから、ボールに触れず裏のスペースに流して、再び右足のクロスステップを入れ、そのまま左足を一閃。ボールはシュートブロックに来たDFより一瞬早くすり抜け、GKも反応できないままニアサイド(左隅)に突き刺さった。

 もし、この場面で吉田が平島のパスを足もとで受けてからターンしていたら、シュートブロックのタイミングと合致していた。そこで切り返してゴールのチャンスはあったかもしれないが、その時間に守備ブロックが敷かれる可能性があり、ゴールの確率は下がっていた。

 ボールを流してからも、右足のクロスステップで軸を作らずにタイミングを合わせて踏み込んでいたら、DFのシュートブロックに合っていたかもしれないし、GKもシンクロする時間やコースが限定できているゆえに、反応されて止められていたかもしれない。

 あの一瞬のシーンで、吉田は最短・最速かつ最良の選択で、完璧にフィニッシュしてみせたのだ。
 

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