シュートを外せば「得点王なのに?」。心ない言葉にも駒澤大の今井拓人は動じない。「絶対に潰されない」チャレンジャー精神でやり抜く

2025年09月15日 安藤隆人

「バケモノ級の選手がゴロゴロいる関東の大学に進みたい」

大学サッカーで着実に力をつけている駒澤大の今井。写真:安藤隆人

 東洋大の優勝で幕を閉じた第49回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント。準決勝で東洋大にPK戦の末に敗れ、涙を流した駒澤大の3年生ストライカー今井拓人は、「来年もまたこの舞台に帰ってきて、次は絶対に優勝を掴みたい」と、悔しさと覚悟を抱えて大会を後にした。

 今井は岡山学芸館高時代、全国の頂点に登り詰めている。第101回全国高校サッカー選手権大会で彼は屈強なフィジカルとスピードを活かし、ラインブレイクやサイドに流れて突破を仕掛けるなど、万能型アタッカーとして躍動。3ゴールを挙げて得点王(5人が3ゴールで並ぶ)と優勝を手にした。だからこそ、大学での日本一も掴み取りたかった。

「周りから『日本一の景色ってどんなもの?』と聞かれるのですが、もう表現できないくらいの景色なんです。だからこそ、あの景色をもう一度見たいし、その時に自分が(その景色を)どう受け取るかを知りたいんです」

 あと、わずかだった。東洋大との準決勝、0-0で迎えた43分にMF糸賀大翼の右からの折り返しを、スピードに乗ったスプリントからゴールに蹴り込んだ。

 その後も高速スプリントを何度も繰り返し、2トップを組む185センチのFW渡邉幸汰が競り勝ったボールを拾って、高校時代と同じようにラインブレイクを仕掛けたり、サイドで起点を作り出したりと、フィニッシャーとチャンスメイクの両方を高強度でこなした。
 
 しかし、88分にCBの坂田陸が東洋大のMF湯之前匡央をペナルティエリア内で倒し、痛恨のPK献上と2枚目のイエローカードで退場となった。このPKを湯之前に決められ土壇場で同点に追いつかれると、守備を固めるために今井は交代を告げられた。

 延長戦では東洋大の猛攻に耐えてPK戦まで持ち込んだが、1人が失敗して決勝進出を逃した。

 勝利と決勝弾の栄誉を掴みかけていた今井だが、するりとその手からこぼれ落ちていき、『あの景色』は、はかなく消えていった。

「あとちょっとだからと言って、これで来年、近づいたわけではありません。また一からしっかりと積み重ねていかないと、絶対にチャンスは来ないですから」

『次』は簡単には訪れない。今井は日本一に辿り着く厳しさも誰よりも知っているし、同時に上には上がゴロゴロといることも知っている。

「全国優勝こそしましたが、それはチームとして勝っただけで、試合をこなしていくなかで、全国区で自分よりうまい選手を何人も目の当たりにしてきました。同年代だと福田師王(現ボルシアMG)選手のインパクトは凄まじかった。『やっぱり全国はものすごく広いな』と思ったからこそ、大学を決める時も、バケモノ級の選手がゴロゴロいる関東の大学に進みたいと強く思い、駒澤大に決めました」
 

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