[本田泰人の眼]メキシコには勝てた、いや勝たなければいけなかった。開始15分までに仕留められなかったのが痛かった

2025年09月08日 サッカーダイジェストWeb編集部

変わっていないのは日本の決定力不足

前線の基準点として奮闘した上田。ゴールが欲しかった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/現地特派)

 勝てた試合だった。いや、勝たなければいけない試合だった。

 アメリカのオークランドでメキシコと対戦。立ち上がりから積極的なハイプレスで日本が主導権を握った。4分には久保建英が左足シュート。いきなりの決定機を迎えるなどチャンスを多く作り出した。しかし最後までネットを揺らすことができず、スコアレスドローに終わった。

 拮抗した試合をしっかり勝ち切れるかどうかで、ワールドカップの結果は変わる。本番を見据えたシミュレーションとして考えると、勝てるチャンスがありながら勝ちきれなかったのだから、チームとしても合格点は与えられない。

 試合後、「前半は良かった」と選手たちは口を揃えていたが、ワールドカップは結果がすべてだ。

 10年前に日本代表を率いた敵将アギーレ氏の前で大きな進歩を見せつけたものの、変わっていないのは日本の決定力不足だろう。

 この日、日本は9本のシュートを放ち、そのうち枠内シュートは2本だった。対するメキシコは8本のシュートで、枠内シュートは1本だった。

 注目したいのは、日本の9本のうち、5本が立ち上がり15分で打ったものだ。前半の残り30分はゼロだった。この数字を見ても、15分までに仕留めなかったことが、日本が勝ちきれなかった大きな要因と言える。
 
  サッカーの試合は90分だ。ワールドカップの相手を考えれば、90分間を通して日本がワンサイドゲームにする展開は皆無に等しい。つまり、自分たちの時間帯で得点し、相手の時間帯で失点しないことが大事だ。

 デュエルで負けていなかったし、チャンスも作れていた。しかし、この日のメキシコのレベルを考えれば、もっとシュートの数を増やすことはできたはずだ。

 日本に足りなかったのは、ほんのちょっとのシュートチャンスを逃さない"怖さ"だ。

 たとえば、韓国はアメリカと対戦し、ソン・フンミンの1ゴール・1アシストで2-0の勝利を収めた。かつてのプレミアリーグ得点王と比べるのは酷だが、エースと呼ばれる選手が日本にはいなかった。格という点では三笘薫がその役割を担うべきだが、その三笘は得意の「縦突破」を警戒されたし、ゴールが遠かった。

 上田綺世もしかり。身体を張ったポストプレーで前線の起点となり続けたが、シュートの数は1本のみ。シュート以外のパフォーマンスは100点に近い出来だったが、本来ならばストライカーとしてソン・フンミンのような存在感を示してほしい。肝心のゴールがなかったので、評価も高くはできない。

 相手の守備が強固でも、もっと攻撃のクオリティを上げてシュートに持ち込めないと、ワールドカップで勝つことは難しいだろう。
 

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