【指揮官コラム】カターレ富山監督 三浦泰年の『情熱地泰』|失敗を覚悟でトライする気はないか?

2016年08月03日 サッカーダイジェストWeb編集部

失敗が許されるプロなど存在しない!

自身も長年、ミスの許されない闘いの場に身を投じてきた。だからこそ、リスクを冒してトライしない人が増えている現状に違和感を持つ。(C) J.LEAGUE PHOTOS

「失敗したらやり直せ」
「成功したら花が咲く」
と言ってなかなかチャンスをモノにできない若い選手を試合に送り出したことがある。
 
 人生もそうかもしれない。失敗したら何度もやり直せば良いのかもしれない。失敗を恐れずに転んでも、何度も立ち上がる。100回転んでも101回立ち上がれば、「俺は立っているのだから」と言える。転んだ数より1回多ければ良いのだ。
 
 しかし最近では、失敗に対して「恥ずかしい」という感情を持つ人が多いせいか、トライできない人間が増えているような気がする。これはちょっとした違和感でもある。
 
 自分自身のプライドと周りが見る自身へのイメージを守るためなのか、失敗を恐れ、恥をかくことを嫌い「何もしない」ことで自身の格好を整えている。まさに格好つけ氏だ……。
 
 これは世の中の風潮、社会の仕組みが少し変わっているところからも来るのであろう。
 
 イメージだけで人を中傷し、間違いを見つければ直ぐにネットの掲示板やブログ、SNSなどで騒ぎ立てる。そんな時代が人を臆病にさせているのであろうか?
 
 根性のまま、あるがまま、思った通り発言し行動に移し、熱く、直感で動く人が減っている。
 
 上に媚びを売り、下に強く見せ、責任を取らない。失敗を失敗と認めず、恥をかいて成長することのできない人間が増えている。
 
 ただここで間違ってほしくないのは、「失敗」を許されると思っていたのでは大きな間違いだ。
 
 僕がいる世界、サッカーの世界では失敗は許されない。ひとつの失敗(ミス)が失点につながり敗戦となり得る。
「失敗しても良いから思い切ってやれ!」なんていうのは口だけ。
プロの世界、失敗は許されない。
 
 僕の好きなドラマ「Doctor-X」の大門未知子は「私、失敗しませんから!」が口癖な組織に属さない、群を嫌う、叩き上げのドクターという設定。失敗しても良いドクターが、世の中に存在するのか? どんな大きな組織、バックがいたとしても、失敗して良いドクターはいないということなのだ。
 
 もちろん結果として、なんの世界でも人間のやる事なのだから失敗はある。しかし、あらかじめ失敗が許されているプロが存在してはいけないのだ。
 

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