ドルトムント・サポーターが“嫌われ者”RBライプツィヒ戦の遠征をボイコット

2016年08月02日 サッカーダイジェストWeb編集部

ドイツ・サッカーの根幹を揺るがす「悪の帝国」として…。

在籍歴20年以下のクラブオーナー(企業)は、株式の49パーセントまでしか所有できないというルールをも破ろうとしたことも、RBライプツィヒへの周囲の反感を増長させた。選手に罪はないが……。 (C) Getty Images

 一部のドルトムント・サポーターが、来るシーズンにおいて、あるアウェーマッチでの遠征をボイコットすると、地元紙『WAZ』などが報じている。
 
 昨シーズン、DFBカップ準々決勝(シュツットガルト戦)で、チケット価格に対する抗議の意味で応援をボイコットしたドルトムントだが、今回の抗議の対象は自チームではなく、今シーズンよりブンデスリーガの舞台に立つRBライプツィヒである。
 
 9月11日にドルトムントはライプツィヒのホームに乗り込んでブンデスリーガ第2節を戦うことになるが、40人を超えるサポーターが「よく熟考した末に遠征をボイコットし、同日に試合を行なうリザーブチームを応援することにした」と声明を出している。
 
 この原因は、対戦するRBライプツィヒというクラブにあるという。このクラブは昨シーズン、ブンデスリーガ2部で2位となり、トップリーグへの昇格を果たしたが、その出自により、「ドイツ一で嫌われているチーム」といわれているのだ。
 
 2009年、ライプツィヒにあるマルクランシュタットというスポーツクラブの、当時5部リーグに属していたサッカーチームを買収したのは、世界的なエナジー飲料メーカーの「レッドブル」だった。
 
 スポーツの世界でその名を轟かせているレッドブルだが、その目的はあくまでも、自社の宣伝である。しかしドイツでは、宣伝目的で企業名をクラブの名前に入れることを禁止している(レバークーゼンやヴォルフスブルクは創立の経緯から例外的に認められている)。
 
 これに対してレッドブルは、「RasenBallsport(芝生のボール競技)」という意味で「RB」を入れ、「RBライプツィヒ」という名前を統括組織に認めさせた。そして狙い通り、これによる宣伝効果は非常に大きいといわれている。
 
 このような強引なまでの姿勢と、潤沢な資金を投じてチームを強化し、毎シーズン、昇格を果たしていく"金満クラブ"の姿は、ドイツ・サッカーの根幹を揺るがす「悪の帝国」であるとして、他クラブから忌み嫌われるようになっていった。
 
 試合では常にブーイングを浴び、サポーターですら非難の対象となっているRBライプツィヒ。ここに移籍した選手も、前所属クラブからはもちろん、それ以外のクラブのサポーターからも「裏切り者」と罵られることになるという。
 
 昨シーズンは2部リーグにいながら、U-21ドイツ代表のダビー・ゼルケをブレーメンから獲得し、その戦力補強費は他の17クラブ全ての合計とほぼ同額という、圧倒的な財力を有するRBライプツィヒは、今冬には8万人規模のスタジアムを建設する計画があると発表している。
 
 今オフはすでに、RBザルツブルク(レッドブルが所有するクラブ)からギニア代表MFのナビ・ケイタ、シュツットガルトからU-21ドイツ代表FWのティモ・ヴェルナーを獲得したが、その金額はいずれも1000万ユーロを超えるビッグディールである。
 
 また、獲得はならなかったものの、バーゼルのスイス代表FW、ブレール・エムボロ(シャルケに移籍)の争奪戦にも参戦し、2000万ユーロを提示して話題になった。
 
 そんなチームに対する今回のドルトムント・サポーターの行動は、「(ホームチームである)RBライプツィヒの金稼ぎを助けたくない」という意図がある。
 
 多額の金が動くようになった現代サッカーにおいて、金の力をフルに活かし、バイエルンと肩を並べるほどの強豪クラブになることを目指すライプツィヒと、これを拒絶して伝統を守りたい大勢のクラブとのせめぎ合い――。これも、今シーズンのブンデスリーガの見どころと言える。
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