「天才だ」教え子が続々と指導者に…稀代の名将に“弟子”たちは感謝「独特な指導法」「彼との関係は宝物」「分析力が高すぎる」【現地発】

2025年08月25日 エル・パイス紙

「彼が書き留めていたメモを譲ってもらった」

ビルバオ時代のビエルサ。(C)Getty Images

 イケル・ムニアインはサン・ロレンソを退団し、故郷に戻ること決めた。このキャリアの転機が現役引退を意味するかどうかは不明だったが、彼をよく知る人たちはその可能性を仄めかしていた。そしてその通りになった。

 南米へ渡る前の2024年にアスレティックのキャプテンとしてコパ・デル・レイのトロフィーを掲げた彼に関する次のニュースは、指導者に転身し、テルセーラ・フェデラシオン(スペイン5部)に所属するCDデリオの監督に就任するというものだった。

「随分前からこのステップを踏み出すことを決めていた。そして今、その時が来た。興奮に満ちた道を歩み始める時がね」と、ムニアインは就任発表の日に語った。

 ムニアインは、2009年7月に16歳7か月でアスレティックのトップチームにデビューした。当時アスレティックを率いていたのはホアキン・カパロスだった。その2年後に重要な出会いを果たす。現ウルグアイ代表監督のマルセロ・ビエルサがカパロスの後任に選ばれたのだ。

 そのビエルサ政権の1年目の2011―12シーズン、アスレティックは快進撃を披露。コパ・デル・レイとヨーロッパリーグ(EL)の決勝に進出したが、ムニアインの引退を受け、そのチームで現在も現役を続けているのはハビ・マルティネス(カタールSC)、ラウール・フェルナンデス(アラベス)、アンデル・エレーラ(ボカ・ジュニオルス)、イニゴ・ルイス・デ・ガラレタ(アスレティック)の4人のみとなった。
 
 特筆に値するのは、引退組の中で、指導者に転身した割合の多さだ。その中には、ビルバオ・アスレティック(アスレティックのリザーブチーム)を率いた経験があるカルロス・グルペギと今シーズンからアスレティックのコーチングスタッフに加わったパブロ・オルバイスのほかに、3人がプロチームの監督を務めている。

 その1人のイバイ・ゴメスは、アレナスをプリメーラ・レフェレンテ(スペイン3部)昇格に導いた後、今シーズンから2部のアンドラを指揮する。ビルバオ出身の彼は、ことあるごとにビエルサから受けた影響の大きさを強調している。

「現役時代、監督やコーチが教えてくれたことをメモする習慣があった。ビエルサがアスレティックを去った時は、そのシーズン、彼が書き留めていたメモを譲ってもらった。それほどマルセロの指導方法は独特で、私の目を引いた。2、3人が特定のエリアで絡む連携、スペースの占有と放棄、深い位置でのマークを外す動きやサポート、フリーの選手の見つけ方といった具合にね」
 

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