【リオ五輪】オーバーエイジ融合による+αは? 浮かび上がる“興梠依存症”、守備への不安…

2016年07月31日 小田智史(サッカーダイジェスト)

攻撃に新たな選択肢をもたらすも、“興梠依存症”には要注意。

興梠の臨機応変なプレーはチームに新たな選択肢をもたらしている。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト特派)

 7月19日から始まったオーバーエイジ3人(興梠慎三、塩谷司、藤春廣輝)を取り込む作業は、およそ2週間が経過した。アラカジュで直前合宿を張り、セルジッペ戦、ブラジル戦とふたつの実戦を消化。オーバーエイジ融合による+αは見られたのか――。

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 結論から言うと、攻撃の興梠と、守備の塩谷・藤春で明暗が分かれる。前者は力強さとしなやかさを武器に、派遣問題に揺れる久保裕也に代わって、前線のターゲットマンとして及第点の働き。4-2-3-1の際は、CFとトップ下の関係で浅野拓磨と好連係を披露。手倉森監督も「クサビだけでなく、ダイレクトプレーや一気に裏を突く動きなど、質を上げてくれている」とスピーディな攻撃実現への貢献度を評価する。
 
 ブラジル戦では後ろがビルドアップで苦戦しているとみるや、自分の判断でポジションを下げ、後方をサポート。戦術理解と状況判断に長け、臨機応変なプレーはチームに新たな選択肢をもたらしている。
 
「僕の役割としてやっぱり前で収めることだと思うので、しっかり仕事をして、チャンスがあればゴールを狙っていきたい」
 
 もっとも、"興梠依存症"には要注意だ。明確なオプションができたのはポジティブな要素だが、まずは興梠に預けてから、と周りが意識しすぎている感も否めない。縦パス一辺倒になると相手に狙われやすくなり、ブラジル戦のように一方的に押し込まれると前線で孤立してしまう。手倉森監督も「裏を狙うからこそ、彼の足下が効いてくる。その優先順位を理解してもらいたい」と話しており、興梠を経由する形と、そうでない形(カウンターやサイド攻撃など)のメリハリをつけて展開していきたい。

 気掛かりなのは、塩谷と藤春の"守備組"のほうだ。

 塩谷のフィジカルや1対1の強さは国内トップレベル。ブラジル戦ではこの日1本目のFKを任されるなど(結果は壁に阻まれる)、強烈な一発も兼ね備える。しかし、所属クラブの広島では3バックを採用しており、本格的に4バックでプレーするのは水戸時代の2012年まで遡る。こと4バックにおける連係は、CB同士のマークの受け渡しや、SBのカバーリングなど、まだ手探りな印象も強い。

次ページ塩谷は4バックへの“慣れ”が必要。藤春はいかに攻撃に軸足を置けるか。

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