【川崎】車屋紳太郎のプロ初ゴールの陰に中村憲剛の妙技あり。「構図は俺の頭のなかにできていた」

2016年07月31日 多田哲平(サッカーダイジェスト)

緻密に練られたパスが車屋のゴールを演出した。

計算し尽くされたパスで先制点と2点目を演出した中村(14番)。まさに〝車屋使い″と呼ぶべき活躍だった。(C)SOCCER DIGEST

[J1第2ステージ6節]湘南2-3川崎/7月30日/Shonan BMWスタジアム平塚
 
 J1第2ステージ6節・湘南戦は計5ゴールが生まれた乱打戦に。この試合の主役を挙げるとすれば、やはり2得点に絡んだ車屋紳太郎だろう。

 快足が売りのこのSBは、32分に「ビッグブリッジ」や「裏街道」などと呼ばれるフェイントで、対峙する藤田征也をかわすと、そのままシュートに持ち込んでプロ初ゴールを挙げる。さらに48分には再び藤田をかわし、大久保嘉人のゴールをアシスト。まさに出色の出来で、試合後にはサポーターによる車屋の応援歌が長い間響いていた。
 
 ただ、この左SBの活躍の陰には、中村憲剛の絶妙なお膳立てがあった。
 
 湘南戦でボランチとして先発した中村は、監督からの指示で前半途中に左サイドハーフにポジションを移す。
 
 「監督から変われと言われて(サイドハーフに移った)。岡本(拓也)選手とか藤田選手が、俺がそこから中に入った時にどうやってポジションつくかなと思いながらやっていた」
 
 中村はサイドハーフに入った時に、湘南守備陣の動きを観察していた。
 
 「(先制点の場面は)エウソン(エウシーニョ)からだったと思うんですけど、俺のところにボールが来たら、藤田選手と紳太郎が1対1になる構図は俺の頭のなかにできていた。
 
 岡本選手が俺のところに寄せに来てるから、藤田選手へのカバーはない。しかも4番の選手(アンドレ・バイア)はカバーが遅れるというスカウティングだった。とにかく紳太郎は1対1が強いから、『いけ!』っていう意味も込めてパスを出した。それでしっかり決めたからねえ、凄いなと思った」
 
 緻密に練られたパスが車屋のゴールを演出。戦況を読む能力に長ける中村ならではの妙技だった。さらに驚くべきは、2点目のシーンもこの〝立役者″からのパスだった。
 
 「2点目のほうが好きだけどね。シューッと長いボールを裏に出したパス」
 
 車屋のクロスを大久保がワンタッチで押し込み決めた川崎の2点目。この場面でも、車屋のスピードを生かすため前方の空いたスペースにスルーパスを送り、またもや、車屋と藤田の1対1の局面を作り出した。
 
 「『車屋使い』って呼んで」
 
 相手を観察し、動きを読み取る頭脳とそれを実践する技術。車屋の活躍の陰には、中村の妙技があった。
 
取材・文:多田哲平(サッカーダイジェストWEB編集部)
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事