「落ち着いたプレーができるブラジル人選手」
フラメンゴを率いるフィリペ・ルイス。(C)Getty Images
クラブ・ワールドカップ、フラメンゴを率いるフィリペ・ルイスは戦術的に魅力的な戦いを見せた。
グループリーグ、フラメンゴはチェルシー、エスペランス・チュニス、ロサンゼルスFCと同組で無敗。首位でベスト16に進出した後、バイエルン・ミュンヘンには2-4と打ち負けた。しかし一歩も引かずにやり合う戦いぶりは、高い評価を受けている。アナーキーで即興的なブラジルらしくなく、ハイプレスやトランジションなど論理的アプローチで戦いを構築していたからだ。
"サッカー王国"ブラジルは有力選手を生み出す一方、「名将がいない」と言われる。たしかにブラジル代表はブラジル人監督で幾度も世界を制している。しかしワールドカップは戦術よりも、選手個々の力や士気の高さや国の伝統が結果に反映される。
「本能的で感覚的なサッカー文化だけに、監督が育まれる土壌がない」
そんな声もある。実際、欧州のクラブで明確な結果を残したブラジル人監督は皆無に等しい。日本を含めたアジアや欧州以外の地域では、「ブラジル」というブランドだけで監督も名将だと捉えているが、欧州では最初から選択肢にすらない状況である。ブラジル代表でさえ、とうとうイタリア人の名将カルロ・アンチェロッティを迎え入れた。
その中で、フィリペ監督は一つの希望と言える。
グループリーグ、フラメンゴはチェルシー、エスペランス・チュニス、ロサンゼルスFCと同組で無敗。首位でベスト16に進出した後、バイエルン・ミュンヘンには2-4と打ち負けた。しかし一歩も引かずにやり合う戦いぶりは、高い評価を受けている。アナーキーで即興的なブラジルらしくなく、ハイプレスやトランジションなど論理的アプローチで戦いを構築していたからだ。
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そんな声もある。実際、欧州のクラブで明確な結果を残したブラジル人監督は皆無に等しい。日本を含めたアジアや欧州以外の地域では、「ブラジル」というブランドだけで監督も名将だと捉えているが、欧州では最初から選択肢にすらない状況である。ブラジル代表でさえ、とうとうイタリア人の名将カルロ・アンチェロッティを迎え入れた。
その中で、フィリペ監督は一つの希望と言える。
フィリペはポーランド移民の子孫である。ジャラグア・ド・スルというハンガリー、ポーランド、イタリア、ドイツなどの欧州移民が1876年に作った町の出身。ジャラグア・ド・スルは新興都市で、恵まれた家庭が多い。教育面も進んでおり、欧州の影響を受けている。その町で、フィリペは他のブラジル人と同じようにフットサルとサッカーに夢中な日々を送っていたが、ポーランド人の遺伝的資質を濃厚に受け継いだのか。
セレソンでも活躍したフィリペのアスリートとしての特長は持久力だった。サイドバックとして攻撃、守備をカバーできる無尽蔵の体力は出色。細身だが骨格に優れ、体幹も強く、走るフォームが良いことで、疲労が最低限に抑えられた。
「落ち着いたプレーができるブラジル人選手」
その点で、彼は特別だった。感情だけに左右されない。思慮深く、明晰な頭脳で物事を見通し、選択することができた。
そこは監督になった今も変わっていない。その性質とサイドバック人生のおかげで、考察力は成熟した。そして麾下選手として監督から姿勢を学び、中でもアトレティコ・マドリー時代のディエゴ・シメオネ監督の影響は小さくない。
「チョロ(シメオネ)は1試合1試合を戦っていた。試合前はセットプレー、タクティクス、フィジカル、すべてをマックスに高めていく。いざ、その試合を戦ったら、もうその試合の反省などしない。ロッカールームでは、次の試合に向けた戦略を語るんだ」
かつてフィリペは語っていた。出会った監督たちによって、素養は磨き上げられたのだろう。数年後、ブラジル史上最高の監督が生まれるとすれば―――彼が最有力候補だ。
文●小宮良之
【著者プロフィール】こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
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